【内田雅也の追球】拙攻の連続だった阪神 「前髪」をつかむためには謙虚に再確認する姿勢必要

[ 2022年6月24日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-3広島 ( 2022年6月23日    マツダ )

<広・神>3回1死満塁、大山は空振り三振に倒れる(撮影・坂田 高浩)
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 サヨナラ負けかと思われた延長10回裏は走者の転倒、12回裏はフェンス際の打球失速に助けられた。幸運だったと、引き分けを前向きにとらえたい。問題は再三の好機を逃した打線である。

 竹内まりやの歌に『チャンスの前髪』がある。ドラマ主題歌で2007年8月発売。女友だちが協力し、人生のチャンスをつかもうとする。

 ♪Oh チャンスの神様は 前髪しかないから 通り過ぎたら 手に入れることは無理よ

 歌詞はギリシャ神話に由来する。チャンスの男性神、カイロスは前髪の長い美少年だが後頭部ははげている。このため、前からやって来た時につかまえなければ、後からつかまえられない。

 この夜の阪神だ。1回表こそ相手守備の乱れから2点を拾ったが、その後は拙攻の連続だった。

 あれほど打撃好調だった大山も4度、いずれも得点圏に走者を置いた打席で凡退した。3回表1死満塁では甘いナックルカーブに中途半端なハーフスイングで三振した。4打数無安打だった前夜も延長10回表無死二塁の好機で、内角甘めの直球を見逃し三振していた。読みや勘が外れているのか、迷いがあるのか。

 「打撃には波がある。好不調が入れ替わるのはだいたい3週間」と元コーチ(現中日2軍監督)の片岡篤史が話していたのを思い出した。きょう24日、シーズン72試合目の中間点を迎える。梅雨時の体調を含め、心身ともに正念場である。

 勝負師はチャンスの神様の特徴を知っている。プロ棋士・羽生善治も<チャンスというのは長い時間は続きません。その瞬間を大胆に勇敢に捕まえないとすぐに逃げてしまいます>と著書『迷いながら、強くなる』(三笠書房)に記した。問題は経験と準備という。

 好機での打撃について元監督・和田豊も「どれだけ頭を整理して打席に立てるか」と、相手の攻めや狙いなど準備の重要性を説いていた。もちろん、大山だけでなく、打線全体の課題である。

 広島に開幕10連敗した1988(昭和63)年を思い出す。当時監督の村山実は「負けてはいるが接戦ばかりだ。大差はない」と強弁した。今季も接戦続きの9敗2分けだが、微差は大差を招く。糸井嘉男の憤死など謙虚に再確認し、差を詰めていきたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年6月24日のニュース