稲葉監督が原監督から授かった言葉 勝負は時の運、その時を変えるには

[ 2021年9月10日 08:00 ]

坂本(右端)を交え、侍ジャパンの(左から)井端コーチ、稲葉監督、建山コーチと談笑する原監督(撮影・森沢裕)
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 侍ジャパン・稲葉篤紀監督は、数多くの良き指導者に恵まれた幸せを何度も口にする。中京高の西脇昭次監督、法大の山本泰監督と山中正竹監督。プロ入り後はヤクルト時代の野村克也監督、若松勉監督、日本ハムではトレイ・ヒルマン監督と梨田昌孝監督、栗山英樹監督の指導を受けた。

 また、日本代表では北京五輪の星野仙一監督、そして09年WBCで原辰徳監督、13年WBCでは山本浩二監督の下でプレーした。東京五輪で金メダルを獲得し、各球団へお礼のあいさつ回りで行脚。9日は常に気に掛けてもらい、大事な気付きを何度ももらった巨人・原辰徳監督と再会した。

 「苦しい試合が多かったけど、よく勝ちきったね、と。よく頑張ったねという、ねぎらいの言葉を掛けていただきました」

 表情を崩して稲葉監督は話した。キャンプ中やシーズン中の公式戦視察など、原監督と野球談議に花を咲かせることが何よりも楽しかった。

 侍ジャパンは7月25日に仙台で巨人と強化試合を戦い、翌日に開幕・ドミニカ共和国戦が行われる福島へ移動した。強化試合のお礼をメールで伝えると、原監督から返信があった。

 「“勝負は時の運。しかし、その時を変えることもできる”と。勝負って本当に時の運だと思うけど、それを自分で変えられるという。この五輪のどこかなのかな、とか。そこが大会中もずっと頭の中に残っていて」

 勝負の流れに任せるべき時と、違う流れになってしまった時にそれを自分で変える時と。「決断とかそういうことを含めて、凄く僕の中でずっと考えていた言葉になりました」と大会期間中を振り返った。

 接戦続きではあったが、侍ジャパンは5戦全勝で金メダルを獲得した。紙一重の戦いの中で、流れを逃さず、うまく流れに乗った。

 「接戦だったから。また良い方も、反省点も出ながらの戦いだった。接戦の方が勝負事はうまく進む、という話をさせていただいた」と稲葉監督。期せずした展開であろうと、結果的に勝利に結び付け、頂点への道とした。

 決戦の舞台となった横浜スタジアムで、2人の“世界一監督”が交わした会話だった。球場内は五輪仕様とは様変わりしていた。

 「広告がある、なしとかで、あんなに球場って変わるんだなと。全然オリンピックをやった球場に見えなかった。三塁ベンチで、こんな椅子あったっけ?と聞いたら、“ありましたよ”と言われて」と照れ気味に笑った稲葉監督。東京五輪を戦った「横浜スタジアム」は、既に形を変えて残ってはいないが、胸の奥には、あの光景がまだくっきり焼き付いている。(記者コラム・後藤 茂樹)

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2021年9月10日のニュース