見せ場なき大敗で甦った「先発予想」時代の苦労 「予告先発」の高橋は右打者6人の打線に沈んだ

[ 2021年9月10日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3ー13ヤクルト ( 2021年9月9日    甲子園 )

<神・ヤ(18)>2回1死一、三塁、オスナに中犠飛を許し、6点目を失う高橋(撮影・北條 貴史)
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 【畑野理之 理論】初回の攻防がすべてやったかな。高橋遥人は6安打されて5失点。大山悠輔とジェリー・サンズの2つの失策で足を引っ張られたのも痛かった。裏の攻撃では1死満塁とすぐに反撃態勢をとったものの、そのサンズと大山が一人も還せずに無得点。あまりにも対照的なスタートとなった。

 高橋は2回にも1点を失い、結局4回6失点でマウンドを降りた。Vの使者になるのではと期待が大きかったので注目して見たが、まったく予期せぬ結果となり、降板後は、昔のことを思い出しながらスコアブックを付けていた。

 それは、今は「予告先発」やから良かった…ということ。セ・リーグも12年に同制度を導入したが、それ以前は「先発予想」だった。作戦上のことなので監督も選手も名前を教えてくれないため、よく外していたのが苦い思い出だ。先発投手が順番に回っているうちはいいのだが、この日の高橋のように春季キャンプで離脱してからの復帰初登板を当てるのは難しい。ブルペン入りは登板何日前なのか、多めのショートダッシュは…など先発投手の調整法をチェックしていたし、同じように知りたい相手チームのスコアラーといっしょに双眼鏡をのぞいて練習をみた事もしばしばだった。知られたくないチームは2人1組で行動させたり、投球練習をしたように見せるためブルペンを通ってロッカーに引きあげさせるなどダミーの動きに何度もダマされた。仮に「ヤクルト打線の印象は?」と質問しても、「どこに投げるかは言えないので答えられません」というやり取りになる。もしも今も予想先発だったらこの日の高橋は当たってホッとしたか、その逆で『うちだけ外して申しわけありません』と会社に謝っていたか、どっちやったかなあ…と、ニヤニヤしていたというわけだ。

 特に野村克也監督は相手先発投手を知ることを大事としていた。「弱いチームやから少しでも勝つ確率を上げなアカンやろ」。2000年9月7日、神宮球場でのヤクルト戦では相手先発を左腕と読んで1番に右打ちの塩谷和彦を起用したが、メンバー交換してみれば右投げのドナルド・レモンだったため、プレーボールがかかる前に代打・坪井智哉をコールしたことがあるほど。ちなみに坪井の1打席目は右前打で成功したように見えたが、2―7の敗戦後は、間違えた報告を挙げてきたスコアラーへのボヤキはホントに長かった。

 6人の右打者を並べるなど、ヤクルトは1日前からの高橋対策が奏功したのかもしれない。点差は開く一方で、申し訳ないが目の前の試合の勝敗の興味はどんどんと薄れ、ずっと回想ばかりしてしまった。
=敬称略=
 (専門委員)

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2021年9月10日のニュース