日本ハム・上沢 413日ぶりの白星 家族への思いを胸に左膝骨折を乗り越え「このまま終わりたくない」

[ 2020年7月29日 05:30 ]

パ・リーグ   日本ハム5―1オリックス ( 2020年7月28日    札幌D )

6回2死一、三塁、ロドリゲスを空振り三振に仕留め雄叫びをあげる上沢(撮影・高橋茂夫)
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 413日ぶりの復活勝利だ。昨年6月に打球を受けて左膝蓋(しつがい)骨を骨折した日本ハムの上沢直之投手(26)が28日、オリックス戦で今季3度目の先発登板。術後最長の7回106球を投げ、7安打を浴びながら1失点と粘りの投球で、昨年6月11日の広島戦以来の勝ち星をつかみ取った。チームも上沢の好投で23日以来5日ぶりに単独最下位を脱出した。

 復活。ただ、マウンドに上がるだけでなく、チームを勝たせる投球を目指してきた。前例のない大ケガを負った上沢がそれをやってのけた。

 「リハビリは長かったけど、いつかそういう日が来ると信じていた。やっと勝てて良かった。リハビリ明けの選手ではなく、チームをしっかり引っ張っていかなきゃいけない選手」。試合後の中田との記念撮影。最高の笑顔がはじけた。

 復帰3試合目。「いい意味で力が抜けていた」と要所で踏ん張った。2―1の6回2死一、三塁ではロドリゲスをフォークで空振り三振。思わず吠えた。7回は2死二、三塁のピンチ。それでも最後は宗を右飛に打ち取り、堂々とベンチに帰るさまは、昨季開幕投手の貫禄たっぷりだった。

 昨年6月18日のDeNA戦。強烈なライナーを左膝に受け、骨折した。過去にスポーツ界で膝蓋骨を骨折した前例はあっても、上沢のように真っ二つに割れた例はなかった。選手生命が絶たれるかもしれない大ケガ。全治5カ月の診断も、一進一退を繰り返して、術後初めてブルペンに入ったのは2月のキャンプ中だった。「自分でもいろいろ調べたけど、他のスポーツでも下(の骨)が欠けたりとかはあったけど、真っ二つはなかった。元のパフォーマンスに戻らないかもしれないと言われた。不安になりましたね」。何度も折れそうになった心を支えたのは、打球が直撃したDeNA戦を観戦していた妻、そして昨年11月20日に生まれた第1子となる長女の存在だった。

 モチベーションは2人に野球をやっている姿を見せること。「家で元気がないときもあったと思う。不安や心配をかけた分、もっともっと頑張って家族を笑わせられるように頑張りたい。このまま終わりたくない」。家族の顔を思い浮かべると、つらい一歩も踏み出せた。

 「前例がないから、僕が活躍したら(初の症例として)学会でトレーナーが褒められるかな。今日の1勝は家族と支えてくれた人にささげたい」。家族に贈るウイニングボールを、大事そうに左尻のポケットにしまった。(東尾 洋樹)

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