イチ支えた軽量スパイク 開発担当者「記録に関われ苦労報われた」

[ 2013年8月22日 09:43 ]

今シーズンの「イチローモデル」のスパイクを手にするアシックスの中井申吾さん。後ろは歴代の「イチローモデル」

 イチロー選手の日米通算4000安打達成は、天性のバットコントロールと俊足を抜きには語れない。神戸市のスポーツ用品メーカー「アシックス」は、19年間にわたり専用のスパイクを提供。イチロー選手の要望に応じ、極限まで軽量化を重ねてきた開発担当者の中井申吾さん(32)=兵庫県西宮市=は「偉大な記録に関われて光栄。苦労も報われた」と喜んだ。

 オリックスに所属していた1995年から提供。プロ選手でも既製品を改良するのが一般的だが、近年の「イチローモデル」はシーズンごとに毎年一から開発している。

 イチロー選手が求めるのは「軽さ」と「かっこよさ」だという。記録達成時に履いたスパイクは、軽量スポンジなど新素材を使用。靴底前部の金具も従来の8本から2本減らすなど、耐久性を保ちながら片足230グラムと一般的なスパイクの約3分の2まで軽くした。色の制約がある中、中央から左右に黒と白に分かれる独特のデザインも特徴だ。

 元球児の中井さんが、イチロー選手の担当になったのは入社5年目の2005年。足の感覚が狂うからと平均3試合で取り換える姿に驚いた。要求も厳しい。「これ以上軽くするのは無理だと何度思ったことか」と苦笑する。

 それだけにシアトルマリナーズ時代の06年、来季用の試作品を持って行くと「すぐに履きたい。置いていってくれ」と絶賛してくれたのは忘れられない。履き心地の良さにそのまま試合でも使ってしまい「けがをしたらと不安で仕方がなかった」と振り返る。

 「どれだけ貢献できたか分からないが、少しでも記録に関われたのは励みになる」と中井さん。イチローモデルは市販されておらず、培った技術を全国の高校生や野球愛好者のスパイクにも広く応用するのが次の目標だ。

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2013年8月22日のニュース