東北OB、ブルワーズ斎藤、後輩に贈る言葉

[ 2011年3月29日 06:00 ]

募金活動でサイン会を行ったブルワーズ・斎藤隆(左)

第83回選抜高校野球 東北0―7大垣日大

(3月28日 甲子園)
 東北OBで、今季からブルワーズでプレーしている斎藤隆投手(41)がスポニチ本紙を通じて、後輩たちにメッセージを送った。自身も津波で甚大な被害を受けた仙台市若林区に実家があり、震災直後は両親や親類の安否が確認できない状態が続いた。敗れはしたが、甲子園で全力を出し切った姿は、被災地に伝わったと信じている。

 君たちのひたむきで、全力でプレーする姿は、地元・仙台にきっと伝わったと思います。いつもならば、後輩たちに「ここは君たちが勝ち取った晴れの舞台。精いっぱい頑張ってきてください」と言えたのでしょうが、今回はメディアの方にエールを求められた時も的確な言葉が見つかりませんでした。選手、家族、チーム関係者、多くの方が震災で心に大きな傷を負いました。本当に野球をやっていていいのか。私もアメリカで何度も自問自答し、同時に本当に無力だと感じました。

 先日、知人を介して五十嵐征彦監督と話をすることができました。「精いっぱい頑張ってほしい」と伝えたら「ありがとうございます、光栄です。ミーティングで選手に伝えます。斎藤さんも頑張ってください」と、逆に励まされました。彼らのプレーを実際にテレビで見ることはできませんでしたが、上村投手が「胸を張って帰りたい」と言っていたのを聞きました。甲子園という舞台で一生懸命戦う姿を見せることで、少しでも被災者の方々に勇気や希望を与えることができたならば、それは勝敗を超えた大きな力になったのではないでしょうか。

 自分自身、やれることは限られていますし、野球をすることでしか前に進めない。これが現実です。ただ、たくさんのメジャーリーガーや球団も支援してくれています。アメリカでプレーしていて、世界中の多くの人たちが今回の震災のことを気にかけてくれていることを実感しました。今、私が切に願っているのは、被災者の方の願いが一つでも、少しでもかなうこと。そして生活が少しでも良くなることです。

 そして東北高校の後輩たちへ。君たちはまだ年齢も若いし、繊細な部分もたくさん持っている。今回の震災による心の傷は簡単には癒えないと思いますが、この甲子園の経験はきっと今後に役立つと信じています。前を向いてこれからの人生を歩んでください。私もOBの一人として、心から祈っています。(ブルワーズ投手)

 ≪サイン会で募金活動≫ブルワーズの斎藤は27日(日本時間28日)、キャンプ地で支援を呼び掛けるサイン会を行った。サイン会には、父セシル氏が阪神に在籍した89年に日本で暮らした経験があるフィルダーら、チームメートも多く参加。会場には多くのファンが集まり「選手もスタッフもみんな理解を示してくれて、こういう形で協力できるというのは非常にありがたいこと」と感謝した。震災直後は昼間は練習、夜間は日本との連絡に追われ十分に睡眠が取れないこともあったが、開幕へ向けて調整は順調。「震災と私のコンディションは同じように考えていることはない。全く別ものとして考えています」とプロらしく話した。 

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2011年3月29日のニュース