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【スポニチ×スポキャリインタビューvol.16】阪神大学野球連盟・濱名篤会長(関西国際大理事長)

[ 2021年12月29日 19:15 ]

インタビューにこたえる濱名会長
Photo By スポニチ

 学生のこと、就活のこと――阪神大学野球連盟の会長にきいてみた。

 令和3年12月4日、5日に行われた「阪神大学野球連盟主催就職活動スタートアップセミナー」(共催・株式会社スポキャリ、株式会社アクセスネクステージ)で「就職活動について」と講演した阪神大学野球連盟・濱名篤会長(関西国際大理事長兼学長)の話から今後の就活のポイントをピックアップした。

 コロナ禍により、大学生の就職活動も大きく変わった。企業の採用活動が活発で、「売り手市場」で学生にとって有利だった時代が幕を閉じた。

 コロナの影響で経済活動が鈍化し、リモートワークの発展、人工知能(AI)の進化により、企業も採用枠を見直している。少ない人員で効率的な経営が求められ、「発展のために多くの人を採用する」という考え方も通用しなくなっている。

 年春の卒業予定者の内定率は悪化。すでに始まった23年卒の就活も、濱名会長によれば「難化と短期化」がより進んでいる状況だという。

 体育会系学生の「明るく、元気」が売り物だけでは、この状況を突破できなくなっている。これまで以上に真剣に将来のことを考え、就職活動に取り組む必要がある、と重ねて訴えた。

 [聞き手]岡 泰秀(株)スポキャリ取締役会長。
 昭和50年(1975年)生まれ。京都成章高―大阪体育大。99年4月(株)大阪近鉄バファローズに入社。監督付き広報、2軍チームマネジャーほか、球団社長室に所属し、肖像権委員会、広報業務などに携わる。
 近鉄球団の整理を担当しながら、オリックスバファローズや東北楽天イーグルスの設立に携わり退社。
 09年にスポーツマネジメント会社「スポーツカンパニー」設立。上原浩治(元巨人)、建山義紀(元日本ハム)らの日本側の代理人を務め、清水直行(元ロッテ)らの事業コンサルを務めた。
 04年よりプロスポーツ昭和50年会を立ち上げ、幹事長を務める。05年より大阪体育大学硬式野球部の助監督を務めた(~17年)。16年からは阪神大学野球連盟の常任理事。


 ――就活で苦戦する学生にはどんな傾向がありますか。

 「いぜんとして大手志向が強い。そして活動をスタートするのが遅い。そして野球部だから何とかなる、と思っているのが弱点になっている。自己分析ができずに、意味不明な自信を持っていると、この流れに取り残される。まだ早いって、大丈夫やって、と言っているうちに、採用活動は終わってしまいます」

 ――就活への準備がより必要になってくるということか。

 「エントリーシート(ES)も福雑になっている。面接もオンラインが主流になり長時間になる上に録画もされている。ごまかしは効かない。この状況に応じた対策は絶対に必要です」

 ――スポーツ経験を就活に生かすためには、どのような準備が必要なのか。

 「採用する側が求めているのは結果よりプロセス。過去、現在、そして未来とどんなプロセスを踏んできたのかを伝えることが、何より重要になってくる。そのプロセスから未来への将来性も分かるんです」

 社会人選手を目指して就活するなら、リーグ優勝や、ベストナインなどの受賞歴、3割や10勝といった成績が評価の対象になるが、通常の採用では「3割」や「10勝」という結果より、「人柄」がまず優先される。

 「人柄」が評価されるには、体育会系の場合、必要なのは成功よりも失敗。過去の失敗から、何に気づき、何を変えたかの現在、そして将来はそれをどう生かしたいのか。歩んできたプロセスを採用担当者にしっかりと話せるようにすることが重要なのだ。

 濱名会長が学長をつとめる関西国際大からはドラフト1位で翁田大勢投手が巨人に入団した。翁田投手は濱名会長にリーグ戦での勝ち星を誇るのではなく「コロナで練習ができず、故障もして辛い時期があった。でも、この間にトレーナーと相談して、体幹を鍛えることに取り組み、体質改善をした」と語ったという。これがプロセスだ。

 「スポーツの経験から何に気づいたか。一般の学生よりは材料があるはず。指導者やOB、親に話を聞けば、見過ごしていたものに気づくことも多い。前ばかり見るのではなく、後ろを振り返って、何をどのように学び、何ができるようになったのか。それを第3者に説明しなければならない。自慢話を聞きたい人はいないのだから」

 「人柄」についても、これまでの調和型、調整型より、前に踏み出す突破力、行動力が求められる時代になったと濱名会長は分析した。「多少とんがっても、人より秀でた方が評価されるケースがある。就活において失敗は材料になる。失敗の経験を話せるように、学生生活を記録してほしい」とアドバイスした。

 ◆就活のためのキーワード
 (1)安易な大手志向は禁物。大手のハードルは年々高くなった。インターンシップを通した採用が主になっているところも多い。大手にこだわりすぎると出遅れる可能性が高い。

 (2)語るべきは結果ではなくプロセス。優勝した、3割を打ったなどの自慢話で採用が決まることはまずないと心得た方がいい。成功よりも失敗。失敗から何を学び、何ができるようになったかのプロセスを語ることが重要。

 (3)企業は「いい人」は求めていない。前に踏み出す力、自分で積極的に考えて行動し、簡単にはつぶれない。そして自分のことをよく知っている。そうした人間が求められている。

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