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【スポニチ×スポキャリインタビューvol.15】 中島輝士さん(京都先端科学大学硬式野球部監督)

[ 2021年7月14日 12:00 ]

京都先端科学大学の中島輝士監督

学生のこと、就活のこと――大学の指導者に聞いてみた

京都先端科学大学の中島輝士監督(58)は人生において一番大切なのは人とのつながりだと言い切る。これまで様々な形で野球に携わってきたからこそ、その言葉には重みがある。経歴を振り返れば、いかに多くの場所で活動し、いかに多くの人と接してきたかが分かる。柳川商(現柳川)時代は投手として活躍し、選抜にも出場した。社会人野球の名門・プリンスホテルへ入社後に右肩を痛め野手に転向。猛練習で力をつけ、アマチュアだけで臨んだソウル五輪では日本代表の4番打者として銀メダル獲得に貢献した。1988年ドラフト1位で日本ハムに入団。96年に近鉄で現役を終えるまで8年間で通算453安打、52本塁打、225打点、打率・251の成績を残した。引退後は近鉄の打撃コーチを務め、2000年からスカウトに転身。古巣の日本ハムでもスカウト、打撃コーチを務め、台湾プロ野球・統一のコーチ、監督、独立リーグの四国アイランドリーグplus徳島のコーチ、監督、韓国プロ野球・ハンファの打撃コーチなどを歴任。指導者として経験を積み20年から京滋大学野球リーグに所属する京都先端科学大学で指揮を執る。

[聞き手]岡泰秀(株)スポキャリ取締役会長。昭和50年(1975年)生まれ。京都成章高-大阪体育大。99年4月(株)大阪近鉄バファローズに入社。監督付き広報、2軍チームマネジャーほか、球団社長室に所属し、肖像権委員会、広報業務などに携わる。近鉄球団の整理を担当しながら、オリックスバファローズや東北楽天イーグルスの設立に携わり退社。09年にスポーツマネジメント会社「スポーツカンパニー」設立。上原浩治(元巨人)、建山義紀(元日本ハム)らの日本側の代理人を務め、清水直行(元ロッテ)らの事業コンサルを務めた。04年よりプロスポーツ昭和50年会を立ち上げ、幹事長を務める。05年より大阪体育大学硬式野球部の助監督を務めた(~17年)。16年からは阪神大学野球連盟の常任理事。

-大変ご無沙汰しております。何度か訪れた人生のターニングポイントで、いつも人と出会いや、つながりに助けられたという。
「人間関係が一番大事だと思ったのはスカウトになってから。それまではプロ野球というところで好き勝手にやっていた。ほぼ1軍にいたし、今思えばわがままに育ってきたと思う。頭を下げることも知らなかった。それこそ新幹線の切符の買い方やホテルの取り方も知らないし。スカウトになって初めてホテルをとって、時間表を見て計画を立てて。まだ携帯もない時代だから学校に電話して、頭下げて、よろしくお願いしますと。それからですよ。社会人としてしっかりやれるようになったのは」。

当たり前だったことが、当たり前ではなくなり、自分がこれまでいかに多くの人に支えてもらっていたかを痛感した。
「現役の時にもっと裏方さんの気持ちが分かる選手になっていれば、また違ったかもしれないね。形的には打撃投手におごったり、食事に連れて行ったりしていたけど、やっぱり感謝の気持ちが足りなかったのかなと思う。それを反省できたのはよかった」

現在は大学生を指導し、神宮球場の全国大会を目指す日々。だが、中島監督は野球の技術だけでなく人とのつながりや、感謝の気持ちを忘れない人間形成にも重点を置き、社会で通用する人材の育成に力を入れている。

―選手を獲る、育てる、送り出すということでは、今、スカウト時代の経験が生きているのではないですか?
「高校卒業して、プリンスホテルに入って営業や部屋の掃除やボーイ、販売促進もやった。野球があっての仕事という感じで、本来の仕事の10分の1ぐらいだったが、アマチュア野球の関係者など、いろんなつながりというのはできたし、ありがたかった。プロ野球のつながりよりもアマチュアの人たちのつながりの方が深い。それがスカウトになったときにつながりが大きく生かされたというのは間違いない。もっと早く気づかないといけなかった。相手を尊重して何事も感謝して。そういうことができる社会人になってほしい。基本的な礼儀、あいさつ、人を敬う心。プリンスホテルの社訓は感謝と奉仕だったけど、そういうのを子どもたちに教えていかなくてはいけないし、教える責任がある。人間の根本としてそういうことが、学べているかが大学の4年間で大事だと思う」

―つながりがキーワードということですが、他にはありますか?
「やっぱり人間はまじめが一番だと思う。まじめとは勉強をしっかりやればいいのではなく、ちゃんとした目標を設定して、それに向かってしっかりやるということ。いろんな人間を見てきたけど、まじめにやっている子は成果も結果も出ている。こいつくそまじめだなというぐらいで良いと思う」

―具体的にまじめとは?
「こちらから与えられたことをしっかりやる、その後に自分で工夫してやる力。全体練習が終わってすぐに帰るものもいれば、そのあともしっかりやっているものもいる。もちろんまじめでなくても成績が出るやつはいる。センスや持って生まれたものもある。そういう選手がまじめにやれば誰もかなわないんだけどね。後は見えないところでしっかり頑張ること。そういう努力は見ていなくても分かる。空気が出るね。そういうところを大事にしてやりたいし、継続できるようにしてやりたいね。掃除にしてもみんなとしゃべりながらやっているものもいれば、黙々とやるしっかりしたものもいる。同じ30分間の使い方が違う。時間は一緒だけど、どう有効に使うかだね。それは1球を大切にするということにつながってくる。野球は1試合150球ぐらいで、ポジションにもよるけど自分のところに飛んでくるのは2、3球ぐらい。その1球でミスして負けることもある。だから1球を大切にしておけば、人間形成がしっかりできた社会人になれると思う」

―経歴の中で得たことをどのように学生に伝えていますか?
「ミーティングで話しもするけど、うちはコーチングスタッフがしっかりしている。コーチが伝えているので、遠くで見守っている感じ。コーチが口うるさくいってくれているし、役割分担というか、いいバランスになっていると思う。大学は教育の場だが、練習が厳しくても選手がグラウンドに来るのが楽しく思えるように、なかなかできないけど、この4年間が楽しかったな、ためになったなと後から思えるような場所にしたい。私はレギュラーよりも裏方とかベンチに入れない人を見るようにしている。その方がバランスが取れるからね」

◆就活のためのキーワード
1、大切なのは人との出会いやつながり。基本的な礼儀、あいさつ、感謝の気持ちを忘れずに。
2,どんなことでもまじめに取り組もう。与えられたことをしっかりやる+自分で工夫してやる力を身につけよう。

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