五輪版「SASUKE」は面白いが…TV映え改革に疑問 IOCは存在意義を考えてみるべき

[ 2022年6月28日 04:50 ]

五輪種目候補となった「SASUKE」のセット(C)TBS
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 【記者の目】五輪競技の近代五種の一種目として、TBSが97年から放送する人気番組「SASUKE~Ninja Warrior~」が採用される可能性が出てきた。国際近代五種連合(UIPM)は5月の理事会で24年パリ五輪後に馬術を外して「障害物レース」を試験導入することを発表しており、トルコ・アンカラで28日に開催されるテスト大会で番組セットを使用。11月のUIPMの総会で採用の可否が判断される。スポーツニッポンの本紙編集委員が候補に浮上した背景に迫った

 IOCは近年、新しいスポーツの導入に力を入れてきた。若者へのアピールと収益の拡大が目的で、昨夏の東京五輪でもスケートボードやサーフィンなどが採用された。

 その一方で、観客動員が少なく視聴率が上がらない競技は、どんなに歴史があろうとも容赦なく切り捨てる。今や各競技団体にとって、五輪に残るためには「映像映えして見て楽しめる」ことが絶対条件となり、なりふり構わぬ“改革”を余儀なくされている。テレビ番組を取り入れようという近代五種の試みは、まさにその極致と言っていいだろう。

 世界的な人気番組となった「SASUKE」は見ていて面白いし、それで近代五種が注目を集めて五輪に残れるのなら異存はない。ただ、今回は近代五種という競技の中の1種目の入れ替えなので問題はないが、「人気」だけを基準に五輪の競技を決める今のIOCの方針には疑問を感じざるを得ない。

 デジタル技術の進歩で社会全体が大きく変わりつつある今、スポーツも変革が必要だ。しかし、五輪はただの巨大スポーツイベントではない。平和の祭典として、なぜ100年以上もの間ずっと人々の尊敬を集めてこられたのか。IOCはもう一度自分たちの存在意義を考えてみるべきだろう。(編集委員・藤山 健二)

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2022年6月28日のニュース