打倒・関学大へ、アメフト立命大は「人間力」を高める 藤田新監督「人間教育をもう一回…」

[ 2022年3月17日 08:00 ]

立命大の藤田直孝監督
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 6度の学生日本一を誇る立命館大アメリカンフットボール部の新監督に、昨年までLBコーチを務めた藤田直孝氏(49)が就任した。直近10年間で、甲子園ボウル出場は2015年の一度のみ。ライバル関学大の後塵(じん)を拝して久しい。1994年に初めて日本一に輝いた時のメンバーが「壁」を破れずにいる母校をいかに立て直すか。再建を担う指導者の「所信表明」を届ける。(堀田 和昭)

 ――就任までの経緯を教えてください。
 「1月2週目くらいですかね、OB会と大学の方で選考があって、“君、どうだ?”と言われて、お受けした形です」

 ――要請を受けられて、チーム作りのイメージなどは。
 「以前(1998~2007年)LBコーチをやって、その後、副部長(2010~2019年)、再びLBコーチ(2020~2021年)とチームに携わってきて、その当時から“こういうふうにやれたらいいな”というアイデアは持っていたので、そのあたりを試していければいいな、と思っています。今のコーチ陣も同様に、ああしたい、こうしたいという考えを持っているので、それを一緒に試しつつ、やっている感じです」

 ――アイデアとは具体的に。
 「(前任者の)古橋さんは監督経験も豊富で、ご本人で学生たちを指導していくというスタイルを取られていました。例えば、キャプテンを決めるプロセスなども、基本的には古橋さんがコントロールされていたのを、もう少し集団的に、コーチ陣として、スタッフ全体として学生たちと関わって、我々も一緒に議論しながら運営する形にこの春から変えているところです」

 ――近年、関学大の壁を破れず、甲子園ボウルから遠ざかる状況が続いています。チームに一番足りないものは何でしょう。
 「なかなか難しいですけど…。(少し間をおいて)規律ですかね。昔と比べると、そこがおろそかになっているのかな、と」

 ――規律の乱れはフィールドの中と外、どちらを指しているのですか。
 「主にフィールド外でおろそかになっているのが目立ちますね。それがフィールドの中(の結果)にもつながっているんじゃないか、と。人間教育みたいな部分をもう一回、しっかりやっていこう、という話はコーチ陣ともしています」

 ――どんなところで、それを感じていたのですか。
 「まず、あいさつができない。見知らぬ人が、ここ(クラブハウス)へ入ってきても、ちゃんとあいさつできなくなっている。あと、ホントにしょうもないことですけど、バイクの止め方もそう。次々と乱雑に止めていって、それを誰も気づかずに、奥の車が出せないような状況になってしまう。いろんなことが不十分で、フィールドに出た時だけやればいい、みたいな意識につながって、それが関学戦のプレーにつながっているんじゃないかと思いますね。そういうことをしっかりやらないと、日本一になんかなれませんよ、とは就任以来、選手に話をしています」

 ――昔と比べて、立命館の学生気質の変化はどう見てますか。
 「さっきの話にも通じるところなんですけど、社会性が低いのが気になっている部分ですね。(練習場が)草津に変わってから、実社会、大人と関わる割合がすごく減っていると思うんですね。ここだと、下宿と練習場の行き来で、たまに定食屋へ寄るくらい。京都だと、生活する中にいろんな大人がいて、木屋町なんかへ飲みに行っても、関わりができて、人としても成長できる。あと、今の学生はすごく真面目で、言われたことはきっちりやるんですけど、一方で、すべてを懸けてアメフトに勝ちたいというよりも、練習場に来ている時間だけアメフトを一生懸命やっているみたいなのも一部で見えるかなという気がします」

 ――社会性を養うためには。
 「関西学院さんは、OBが同じポジションの現役選手を食事に連れて行くみたいなのを頻繁にされていると聞きます。そういうのをやってみるのはどうかな、と、うちのOBサイドからも言ってもらっています。関わる大人が増えるのは大事なことだと、僕は思っています」

 ――ライバル同士でも、違いはあるんですね。
 「うちのOBたちからは、就職活動のOB訪問などで後輩と会った時に、(立命館の学生は)今やっていることも、言語化して上手にしゃべれないという話をよく聞きます。関学の子たちの方が、しっかり自分たちのことをしゃべれるし、意見もちゃんと言える。うちの学生は自分の言葉でしゃべれないと言われていて、その辺りをどう改善していこうか、と考えています」

 ――目指すフットボールのスタイルを教えてください。
 「これまでの立命館って、ディフェンスが強くて、止めて勝つみたいな、イメージがあると思うんですけど、そういうスタイルには限界が来ているというか、得点を取っていかないと勝てないという時代になっているんのかな、と。当然、強いディフェンスはいりますけど、ターンオーバーを怖がらず、しっかり点を取っていくフットボールをしていきたいですね」

 ――最後に今年の目標をお願いします。
 「もちろん、関西で優勝して、甲子園ボウルで勝つのが目標です」

 語り口は静かでも、藤田監督の一言一句に潜む危機感は大きい。再建のテーマは「人間力」の向上。いつまでも、関学大の「1強」を許すわけにはいかない。戦国が予想される秋の本番に、生まれ変わった立命大の勇姿があるはずだ。

 ◇藤田 直孝(ふじた・なおたか)1972年(昭47)7月21日生まれ、大阪府豊中市出身の49歳。大阪・箕面高から立命大に進学。4年時にLBのレギュラーに定着し、関西リーグ初優勝、甲子園ボウル制覇に貢献した。卒業後、社会人ブラックイーグルスで3年間プレー。98年から立命大のLBコーチに就任する。副部長を経て、20~21年までLBコーチを務め、今年1月、監督に就任した。

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