新関脇・若隆景 故郷・福島の復興へ「土俵で活躍し、勇気届ける」、13日初日春場所

[ 2022年3月11日 05:30 ]

春場所の番付発表の際、笑顔を見せる新関脇・若隆景(左)と荒汐親方(日本相撲協会提供)
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 2011年に起きた東日本大震災から11日で11年となる。福島市出身で大相撲春場所(13日初日、エディオンアリーナ大阪)で新関脇に昇進した若隆景(27=荒汐部屋)が10日、スポニチ本紙の電話取材で改めて復興への思いを口にした。福島県出身の関脇昇進は昭和以降5人目。現役屈指の技巧派は17年の初土俵から5年連続で勝ち越している春場所で奮闘し、被災地に勇気と元気を届ける。

 絶対に風化させることができない「出来事」がある。3・11東日本大震災。若隆景は「この時期になるとニュースなどでも大きく報道される。もちろん忘れることができない日という意識もある」と特別な感情を抱きながらその日を迎える。

 学法福島高での授業中に巨大地震が襲った。「今まで体感したことない揺れだった」。東京電力福島第1原発の事故も発生し、父が運転する車で上京。長男・渡(若隆元)が所属していた荒汐部屋の厚意で、東京で避難生活を送った。原発事故など不安もあったが、1カ月後には福島に戻って復興を目指す地元で相撲道に励んだ。

 着実に当たり前だった日常は戻りつつある。しかし、「まだ避難場所から戻れない地域もある。志はまだ半ばだと思う」と若隆景は話す。政府主催の追悼式は10年の節目で終了。風化が懸念されるなか「力士として何ができるか。本場所の土俵で活躍し、勇気や元気を被災地に届けることが一番だと思う」と復興への思いを心に刻む。コロナ禍で福島には1年以上帰っていないが地元の後押しは年々高まっている。「熱は届いている。それに応えたい」と地元愛を強調した。

 8日に大阪入り。新関脇の場所に向け「稽古もしっかりできている」という。大阪で迎える特別な日は「犠牲になった方のことや当時のことを思い出して黙とうします」。初土俵を踏んだ春場所は昨年まで5年連続で勝ち越し。この3月の活躍は被災地へ最高の恩返しにもなる。「いいこと(3月は全勝ち越し)聞きました。一日一番に集中できるよう頑張ります」と気持ちを高ぶらせていた。

 ◇若隆景 渥(わかたかかげ・あつし=本名・大波渥)1994年(平6)12月6日生まれ、福島県出身の27歳。祖父は元小結の若葉山、父・政志さんは元幕下・若信夫。長男は幕下・若隆元、次男に幕内・若元春と相撲一家の三男に育つ。学法福島高から東洋大。荒汐部屋に入門し17年春場所に三段目100枚目格付け出しで初土俵を踏む。18年夏場所で新十両、19年九州場所で新入幕。得意は右四つ、寄り。1メートル81、130キロ。家族は沙菜夫人と1男3女。

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