小林会長「渋野さんたちがいないのは寂しいが、国内は盤石。上位層が厚い」今季国内女子ツアー見どころ

[ 2022年2月24日 05:30 ]

色紙に「跳」と記し、笑顔を見せる小林浩美会長(撮影・西尾 大助)
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 女子ゴルフツアーの開幕まで1週間となった。口火を切るダイキン・オーキッド・レディースは3月3日から沖縄・琉球GCで行われる。昨季は稲見萌寧が9勝を挙げ初の賞金女王に輝いた。稲見は東京五輪でも銀メダルを獲得。さらに笹生優花が全米女子オープンを制覇するなど女子ゴルフ界は活況を呈した。また、ツアーを統括する日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は昨年、ツアーの放映権を一括して協会に帰属させることで主催者と合意。トップの小林浩美会長(59)に今季の見どころと協会運営について聞いた。

 ――今季の注目は?
 「今年からシード権をメルセデス・ランキングに一本化しました。昨季は賞金ランキングとの併用。その初代1位が誰になるのか?それは年間を通しての見どころです。選手の意識も変わります」

 ――同ランキングは各試合の順位をポイントに換算し、総合的な活躍度を評価する制度です。
 「ポイント制は世界的な傾向です。順位がポイントに置き換わるので、優勝をはじめ上位に入賞するほど高いポイントを獲得できます。賞金ランキングでは国内外で賞金額に差がありすぎましたが、ポイント制なら海外メジャーの成績も加えることができます。より実力が反映された指標になり、以前より選手からも要望がありました」

 ――期待する選手は?
 「一人でも多くの選手に勝ってほしい。プロとして勝つ夢を実現してほしい。また、いろいろな選手が勝つことで、ファンの皆様の注目やツアー全体がさらに活気づきます」

 ――稲見選手は?
 「彼女はゴルフにとてもストイックで、自分に限界をつくらない。ショットメーカーで、なおかつここぞという時のパットも決められる。試合の流れをつかむのがうまく、総合力は凄く高い」

 ――昨年の反動は心配ない?
 「あの力があればさらに高みを目指しているのではないでしょうか。今年は年間10勝以上も狙ってほしいです」

 ――今年は渋野日向子選手らが米ツアーに本格参戦する。国内が空洞化する心配は?
 「渋野さんたちがいないのは寂しいですが、国内は盤石だと思っています。空洞化の話は(宮里)藍さんが(06年以降)主戦場を米ツアーに移した時にも言われました。でも同世代の(横峯)さくらさんや(諸見里)しのぶさんら、いろいろな選手が頑張って、その後も次々にたくさんの選手が活躍して活況が続いています」

 ――それだけ選手層が厚くなった?
 「平均ストロークを見ると、年間アンダーパーを出す人数が増えています。今は特に、力のある新人が(ツアーに)かたまりで入ってくる。黄金世代も古江(彩佳)さんらの代もそう。年々国内ツアーの競争力が高まって、上位層が厚くなっている。誰かが抜けたとしても、今の強みは国内と海外との両方で選手が活躍していること。グローバル時代に即していると考えます」

 ――選手層が厚くなった理由は?
 「複数あります。まず選手の目標がより高くなった。ネット社会になり、海外の情報が瞬時に得られるようになって、目標が大きく明確になった。指導方法もトラックマンなどのデータを使い科学的になった。日本ゴルフ協会様のトップアマチュア選手への取り組みなど、方策や選手が上達する時間が圧倒的に早くなっています」

 ――JLPGAのツアー強化の効果も大きい。
 「海外メジャーを見据え4日間大会の必要性を訴え、今年は18試合になりました。また(調子の良い選手が出場しやすくなる)リランキング制を導入して競争をあおりました。シーズンの前半と後半が入れ替え制になるため、選手はシーズン序盤から飛ばしていく必要があります」

 ――コースの難易度の幅も広がった。
 「海外ツアーの選手は20アンダーを出すことが珍しくありませんが、日本ツアーでは12、13アンダーで伸び悩み気味。理由は普段から20アンダーが出る試合をあまり経験していないから。普段できないことを緊張する大舞台でできる可能性は低い。今年はセッティング担当の方にお願いして、バーディーをたくさん取らないと勝てないコースとそうではないところ、幅広い難易度の舞台になるように仕上げてもらっています」

 ――コースの練習場も整備した。
 「試合会場の練習場環境の基準値を作って、打席数やアプローチ、バンカー、パッティンググリーンの大きさや状態などを明確にし、試合中の練習環境がまちまちだったのをゴルフ場様の協力を得ながら、改善をずっと図っています」

 ――昨年は稲見選手や笹生選手が世界の舞台で活躍した。
 「手前味噌になりますが“世界で勝つ”を目標に13年からツアー強化をやってきて、年々ツアーの競争力が高まり、国内外で本当に選手が顕著な結果を出していると感じています。私たちは選手がより才能を開花し、力を発揮できる環境をつくることで、援護射撃をしている感じです」

 ――女子ゴルフはずっと右肩上がり。一部ではバブルという見方もある?
 「選手をさらに強くするために、4日間の試合を(会長就任時の)5試合から今年は18試合まで増やし、同時に賞金も上げていただきました。スポンサーの皆様から、ご理解とご支援をいただいたおかげです。地道な努力ですし、今後も継続性が高いと考えています」

 ――これからも発展を続けるために必要なことは?
 「プロスポーツは強いことが命題。やはり、グローバルにも強くエンターテインメント性がより高くなる必要があると思っています。ツアーの強化策を続けながら、より多くの方々に女子ゴルフを見たいと思ってもらえるように頑張ります」

 ――放映権も主催者と合意し、JLPGAに帰属することになった。今後の展開は?
 「全試合(ネットで)有料配信したいと考えています」

 ――こだわりはライブ配信?
 「ライブです。なので、無料視聴できる地上波放送とBS放送との棲み分けです」

 ――有料配信であればテレビ放送と棲み分けられる?
 「テレビ局様との話し合いでそうなりました。いろいろな媒体から試合を見られるようになれば、選択肢も視聴機会も広がる。これまで、ライブ配信をやった時にテレビの録画中継の視聴率が伸びた大会も複数あり、相乗効果が期待できます」

 ――JLPGAが発展するための投資を行うには、放映権が必要だった?
 「そこ(放映権)に触ったことで、今後目指す大きな目標や成長を実現することができます。世界のプロスポーツビジネスは権利ビジネス。放映権、チケット収入、グッズ販売が3大要素。それらで財務基盤を整えて、投資し成長を図っています。“じゃあJLPGAを見た時に、持っている権利は何があるのか?となり、そこが起点となっています」

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