パシュート日本 先行ラスト100メートル転倒で銀メダル 激走及ばず高木菜那号泣…五輪連覇の偉業を逃す

[ 2022年2月15日 17:31 ]

北京五輪第12日 ( 2022年2月15日 )

後方で転倒する高木菜(ロイター)

 スピードスケート女子団体追い抜き(パシュート)の決勝が15日に行われ、日本は強豪のカナダに及ばず銀メダル。2018年平昌大会に続く金メダル、日本女子では史上初となる五輪連覇の偉業を逃した。

 パシュート3人娘の奮闘は、世界一の夢にわずかに届かなかった。エース高木美帆(27=日体大職)、高木菜那(29=日本電産サンキョー)、佐藤綾乃(25=ANA)のベストメンバーで臨んだファイナル。ラスト1週までカナダを僅差でリードしながら、最後の最後で悪夢が待っていた。

 最終コーナー。隊列の最後尾を滑っていた高木菜がバランスを崩し転倒。その瞬間、連覇の夢はついえた。呆然と仲間のもとに戻ってくる姉のもとへ、妹の美帆が駆け寄る。菜那の涙が止まらない。全員から慰められ、肩を抱かれて、世界一の「チームワーク」を証明した。

 表彰式を終え、3人は涙を流した。高木菜那は「やっぱり、最後は転ばなかったら優勝できたかもしれないタイムだったので…。悔しいです」と言葉を絞り出した。高木美帆は「(3つの)どの銀メダルも違う思いがあって、また1500メートルの時とは違った悔しさがある。私の中では、もっと最初の方で何かできたことがあったんじゃないか。後半の戦いになる前に、もっとチームにリズムを作ることができたんじゃないかという思いもある。まだ、どう言葉に表していいか分からない。これに関しては、気持ちの整理をする時間が必要だと思っています」と話した。佐藤綾乃も「美帆さんと同じく、自分にも前半の先頭に出たところとか、後半の前の人へのサポートとか、まだまだできたことがあったんじゃないかな」と語った。

 消耗を軽減できる一方で、隊列が乱れて減速する先頭交代の回数を減らすのが世界のトレンド。日本も18年平昌五輪後は最善の戦術を模索してきた。風洞実験などで科学的データを集め、先頭交代時の空気抵抗を分析。隊列を組む3人の滑る軌道を映像で記録し、どのコース、どのタイミングで選手が入れ替われば減速を最小限に抑えられるかも割り出した。

 1年前の全日本選抜長野大会では1度も先頭を替えない戦術をテスト。今季W杯では交代を1回に抑えて戦った。結果は2位、8位、2位。第2戦は世界記録ペースでラップを刻んだものの、4周を引っ張り消耗した高木菜がラスト1周で転倒した。もともと減速を最小限に抑えて先頭交代できるのが強みで、他国に比べて回数を減らすメリットは少ない。W杯でカナダに3戦全勝を許し、1月の国内合宿中にミーティングを実施。各戦術の長所、短所を検証し、4年前と同じ戦術で戦うことを決めて、今大会に臨んでいた。

 もちろん、2大会連続のメダルとなる「銀」の輝きは決して色あせない。押切美沙紀(29=富士急)を含め、4人で手にした栄光。女王奪還をスローガンに、再び彼女たちは4年後の「夢」に向けて走り始める。

 ◇高木 美帆(たかぎ・みほ)1500メートルの世界記録保持者。18年平昌大会は団体追い抜きで金メダル、1500メートルで2位、1000メートルで3位。オールラウンドの18年世界選手権総合優勝。20年世界選手権スプリント総合優勝。日体大出、日体大職。27歳。北海道出身。1メートル64、58キロ。姉の菜那も今大会の代表。

 ◇高木 菜那(たかぎ・なな)18年平昌大会の団体追い抜きとマススタートで優勝。五輪同一大会で日本女子史上初の2冠。北海道・帯広南商高出、日本電産サンキョー。29歳。北海道出身。

 ◇佐藤 綾乃(さとう・あやの)18年平昌大会団体追い抜き金メダル。今季W杯1500メートルで最高2位。高崎健康福祉大出、ANA。25歳。北海道出身。

 ◇押切 美沙紀(おしぎり・みさき)14年ソチ、18年平昌に続く3度目の五輪出場。世界距離別選手権の団体パシュートで2度銀メダルを獲得した実績を持つ。駒大苫小牧高出、富士急行。29歳。北海道出身。

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