<羽生結弦を語ろう(2)>同世代・佐藤洸彬氏「男の色気と爽やかさ」「妥協なく完璧を求めていた」

[ 2022年2月4日 05:45 ]

羽生結弦(撮影・小海途良幹)
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 第2回は羽生と同じ東北出身で同世代の元スケーターで、現在は木下アカデミーで指導している佐藤洸彬(ひろあき)コーチ(26)。1学年上の先輩を追いかけた現役時代の思い出や、トップで走り続けるストイックさを明かした。

 羽生選手との出会いは、ノービス時代の東北・北海道大会でした。初めてブロック大会に出場した僕は小学4年。成績では5年生の羽生選手がもちろんトップ。ずばぬけてうまかったことを覚えています。僕は地元の岩手県盛岡市で練習していて、周りにはそんなにうまい選手はいませんでした。

 1学年上の羽生選手、田中刑事選手(国際学園)、日野龍樹選手(21年現役引退)が全日本ノービスで優勝を争っていました。次の年も、その次の年も争っていて、あそこにどうにか食らいつこう、追いつこうと練習していました。

 羽生選手とはブロック大会で一緒になるたびに話して、仲良くなりました。印象は本当にそのままという感じです。氷から離れてもスケートのことに関しては食べ物とかもストイック。でも、別に近寄りがたい感じではない。男の色気を持ちつつ強い部分を見せる一方で、爽やかな王子様の感じの部分もある。そのギャップで女性がやられちゃうのかな?

 羽生選手の凄いところは、練習やアイスショーでも120%の力でやる。ショーだから楽しくではなく、120%の羽生結弦を届けるために演技していた。照明や観客席がどこにあって、どう見えて、どのくらいの距離で振りをすれば良いか。本当に妥協なく、常に自分のイメージに完璧を求めてやっていた。大会や本番でどういう演技ができるか。スケーター羽生結弦としてストイックに向き合っていました。

 僕が引退したシーズンの19年全日本選手権を覚えています。控室で僕が“引退するよ”と明かすと、羽生選手は“えーっ!もう辞めんの?”みたいな感じで言っていました。“じゃあ、お先に!”と言って辞めたんですけど。羽生選手と出会えたことで「全日本」に対して意識が高くなった。羽生選手がいなかったら、あんなに競技を続けていたか分からない。自分のスケート人生がコーチとしての指導に役立っています。

 若い世代の選手がどんどん出てきましたが、そこに負けないように頑張れ!と思っています。コーチではなく素の佐藤洸彬として、同世代の選手たちの方を応援しています。今までの経験、これまでの時間はきっと裏切らない。悔いのないように頑張ってほしいです。

 ◆佐藤 洸彬(さとう・ひろあき)1995年(平7)12月6日生まれ、盛岡市出身の26歳。5歳からスケートを始める。GPシリーズNHK杯17年11位、18年10位。全日本選手権は16、17年8位。19~20年シーズンに岩手大大学院修了とともに現役引退。現役時代は「男の色気」をテーマに味わい深い演技を見せた。現在は木下アカデミーで幅広い世代のスケーターを指導している。1メートル65。

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