箱根駅伝初出場を決めた駿河台大 元法大の「爆走王」が仕掛けた“意外な”作戦とは
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10月23日に行われた第98回箱根駅伝予選会(東京・陸上自衛隊立川駐屯地周回コース)。法大時代に茶髪とサングラスという異色のランナーとして注目を集めた徳本一善監督(42)が率いる駿河台大が初の本戦出場を決めた。
監督就任10年目で快挙を成し遂げた徳本監督が予選会突破に向けて練り上げた秘策は、単純だが最も重要かつ効果的な「選手を100%の状態でスタートラインに立たせること」だった。
駿河台大は前回予選会の反省からスタートしていた。12位に躍進した19年の勢いで一気に本戦出場を狙った20年予選会。エース2人のうち1人は故障、もう1人は調子が上がりきらず、予選通過の10位チームと約4分差の15位に沈んだ。
「何か無理矢理帳尻合わせしたみたいな感じのレースでした。飛車角落ちのような形で勝負してしまった」
昨年の経験を踏まえ、徳本監督は冷静に現在のチーム、そして他校の状況を分析して戦略を練ってきた。
「僕が箱根に行きたくても客観的に見たら順位は11番手ぐらい。うちは100%の力を出せば9、10位には入れる可能性はあるけれど、70%の力しか出せなかったら12、13位のチーム。やはり100に近付ける作業が一番大事でそこにフォーカスしたい」
今年は予選会までにケガせず、万全の状態を作るということに主眼を置いた。夏合宿などでは練習量を昨年から15%ほど落とし、その分はフィジカルトレーニングやメンタルトレーニングに時間を割いた。距離を踏む代わりにペアマッサージの時間を増やしたほか、ミーティングを多くするなど、走ること以外で速くなるための取り組みに注力した。
「盲点だったのは夏合宿でした。夏合宿で叩いて、生き残った奴で秋から勝負しようというのがオーソドックス。ただ、うちは替えの選手もそんなにいないんです。1、2枚抜けてもいいから能力を上げていくというのはちょっと間違っているんじゃないかと感じています」
本番が近付くにつれてその考えが正しいことが証明されていく。駿河台大はほぼベストメンバーを組めた一方で、昨年の駿河台大のように主力が欠けたチームも見られた。徳本監督は「他大学を見ても予想されるメンバーが入っていないチームもあった。そういうのが今年はうちはない」と自信を深めていった。
予選会前に徳本監督に話を聞く機会があった。法大時代の思い出から始まり、2年前から学び始めた心理学の話、最近の厚底シューズ事情、レース当日の給水の取り方をどうしようかなど、話は多岐にわたった。大一番を前に緊張感を感じさせず、フランクに取材に応じてくれた。今思えば、それも突破への手応えをつかんでいたからなのだろう。
「選手がどこの違和感もない状態でスタートラインに立たせるということが僕が一番気を使ってきた部分。一方でミスをしたら多分やられる。ボーダーの争いがスゴいんです。あとはもう自分たちの力を発揮するだけ。どこも足が痛いとかないのが今年の一番良かったところですね」
この1年で温めていたプランが立川で奏功した。選手たちは午後10時には携帯電話を回収するなど、高校寮生活のような厳しい規則にも箱根を目標に耐えてきた。「才能がないというところを選手は理解していて、才能がないからこそ才能のある選手に勝つためには何ができるかということを考えた上で1年間行動ができた」
徳本監督の“采配”はズバリ当たった。突破が有力視されていた拓大や出場枠争いのライバル大東大、城西大などが伸び悩む中、派手さはないが堅実にタイムを刻んだ駿河台大が周囲の予想を上回る8位で予選突破を決めた。
結果発表の瞬間。他校の順位をよそに、記者の頭の中は「あの徳本が箱根に戻ってくる!」ということでいっぱいだった。同世代の駅伝ファンとして、現役時代の「爆走王」ぶりをTVで食い入るように見ていた。4年生の2区で途中棄権した姿もライブで見た。ビッグマウスといわれ、賛否両論あったのも知っている。
いまではサングラスはウェリントンメガネに、髪色も落ち着いた徳本監督が言った。「僕が法大時代からいつも面白いことをしてやろうと箱根駅伝に挑んできた。その気持ちは監督になっても変わってない。チームのカラーを箱根でぶつけたい」
久しぶりに聞いた“大口”だった。来年1月2、3日。徳本が何かやってくれる―。期待してやまないのは私だけではないはずだ。(記者コラム・河西 崇)
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