【ラグビー日本代表2021秋の陣《10》】9番獲得へ真っ向勝負 斎藤直人は逃げずに闘う

[ 2021年10月19日 10:38 ]

斎藤直人
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 一つのトライを喜ぶよりも、一つのキックミスを悔やむ。1、2週間丸々休むのが「苦手」と言い、1週間を4勤3休に分けて体を動かす。真面目、慎重で、向上心の塊。一方で15あるポジションで最も狡猾さが役立つスクラムハーフとしては、もっと大胆で、ずるがしこくて、良い意味での遊びがあってもいいかも知れない。この春、満を持してキャップを獲得した斎藤直人(24=東京サントリーサンゴリアス)自身も、そう考えている節がある。

 早大在学中だった18年春にナショナルデベロップメントスコッド(NDS)に名を連ね、ニュージーランド遠征に参加。19年W杯は選考対象に食い込めなかったが、翌20年は最終年となったサンウルブズに加わり、新型コロナによるリーグ打ち切り前まで世界レベルを体感した。代表デビューは、世間の期待や本人の望みからすれば遅かったほど。だから初先発した7月のアイルランド戦で華々しく代表初トライを挙げても、ダイレクトタッチでゲームの流れを失ったことで自責の念に駆られた。23年まで、時間も機会も決して十分ではない。それを自覚するからこそ、常に自分を追い立てる。

 昨年4月、目の上のたんこぶと言える流大と同じチームをあえて選んだ。「より競争が激しいところにいる時間が、自分が成長できる時間だと思っている」からだ。リズミカルなアタックテンポの創出と、パスのスピードには自信があった。だがラストシーズンとなった今年のトップリーグは、流が先発8試合、斎藤はわずか2試合。現代ラグビーではリザーブも重要と周りがいくら唱えようと、何の慰めにもならないだろう。

 「理由は一つではないけど、一番大きい部分はスタッフ、コーチ陣、チームからの信頼の差がかなり大きかったこと。スキル面も向上させないといけない部分がかなりあるが、チームと過ごした時間も少なからず関係あると思う」。高校、大学と主将を経験したが、本来は口べたでシャイな性格。そうした殻を破り、ピッチ外であらゆるポジションの選手、コーチやスタッフとコミュニケーションを取っていかなければ、流との差は埋まらない。9月末から張っている合宿中の今、そして欧州遠征が終わる1カ月先までが、斎藤がピッチ外でも汗をかかなければいけない時間となる。

 W杯2年前の春に初キャップを得た点は流と同じだが、翌年にサンウルブズの主将としてもがき苦しみ、その対価として大きく成長したプロセスを、斎藤が踏むことができない。だからこそ9番を争う過程、紅白のジャージーを着て臨む試合は、19年までの4年間以上の重みを持つ。大好物というチョコレートを、「太りやすいので我慢」しているという秋。チョコ断ちの成果を見せる4番勝負が始まる。

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2021年10月19日のニュース