パラ卓球・浅野俊所属のPIA 先輩社員がコーチ&練習相手に

[ 2021年8月27日 05:30 ]

業務終了後に社内で練習を行う浅野(左)と佐々木コーチ
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 【支える人(3)】夏の祭典を迎えたパラアスリートは、東京パラリンピックまでの道のりをどのように乗り越えてきたのか。選手に寄り添い、ともに戦ってきた家族やスタッフ、組織など周囲にスポットを当てる。

 午後6時になると仕事を終え、練習場に向かう。フロアは異なるが、職場と同じビル内で徒歩とエレベーターで数分。待っているのはコーチ役の先輩社員だ。卓球の知的障がいクラスでメダルを狙う浅野俊(たかし、20)が「恵まれていると思います」と認める環境は、医療機器メーカー「PIA」(東京都品川区)が整えている。

 競技が縁を取り持った。同社の中西聖代表(64)は自らラケットを握って全日本クラブ選手権出場を目指す卓球愛好家。パラ選手を指導する知人に障がい者雇用制度を使った選手採用で協力を求められ「卓球している子は安心できる」と応じた。

 ところが長崎の瓊浦高3年だった選手は程なくアジア選手権で優勝。想像を超える展開に「そんな大事な選手を預かるのは」と戸惑いながら社員として迎え入れたのが浅野だ。部員1人の卓球部を創設すると、コーチに切り札の投入を決めた。

 営業部の佐々木信也氏(28)はジュニア時代から活躍し、専大で全日本選手権にも出場。卒業後は卓球スクールでの指導も経験していた。ただ、競技が縁で入社したとはいえ、想定外の事態。「教えることに違和感はなかったんですけど、まさかパラまで話が膨らむとは…」。それでも指導が始まると力が入り、練習では浅野を混乱させないよう最重要ポイントに絞って助言。「一個一個の技術レベルは高い。100%の力を出せれば優勝できる」と可能性を見いだし、年齢別の大会で全国を狙う複数の社員が交代で練習相手を務める。

 6月下旬に専用練習場を新設。公式戦対応の卓球台も購入した。中西代表は医療機器企業として「社会貢献もしないと。利益の還元は常に考えています」と話す。メダルを意識した金髪で「支えてくれた人への感謝を結果で示したい」と強調する浅野は、25日の1次リーグ初戦で前回銀メダルの難敵に快勝。こちらも“利益還元”に好スタートを切った。(東 信人)

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2021年8月27日のニュース