史上最強の柔道ニッポンに育てた井上康生監督 「熱意」「創意」「誠意」の指導実った

[ 2021年7月30日 05:30 ]

柔道男子100キロ級でウルフ・アロンが金メダルを獲得し、スタンドでほっとした表情を見せる井上康生監督(撮影・北條 貴史)
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 任期満了に伴い五輪を最後に退任する井上康生監督は、84年のロサンゼルス五輪を超える男子5個目の金メダルに「それぞれの夢、目標を達成するために全力で戦った」ことの結果と受け止めた。

 史上初の金メダルなしに終わった12年ロンドン五輪後、34歳の若さで監督に就任。自身も重量級のコーチを務めていたことから「無力さを感じた。自分でいいのかと思った」と自問自答したが、覚悟を持って承諾。リオの2個と合わせ、計7個の金メダルをもたらした指導法の根幹にあるのが、座右の銘でもある「熱意、創意、誠意」の3つの言葉だ。

 選手はもちろん、担当コーチや裏方スタッフとは熱意を持って接する。それが故に、昨年2月の五輪代表発表会見では落選した選手の顔が浮かび、期せずして落涙した。17年に陶芸、18年に茶道、19年には書道を選手に触れさせ、柔道につながるヒントを得ることを促した創意もある。そして誠意を持って選手の所属実業団と関係を深め、個々の選手の強化を促すなど、心を砕いてきた。

 指導は「自分の経験に比重がいきがちだが、時にそれが危険になる。常に勉強し、アップデートを図る」とし、趣味の読書では歴史書、啓発本、ビジネス書と他ジャンルに手を広げる。他分野のトップランナーとも積極的に交流。「名選手、名将にあらず」の格言を胸に、たゆまず努力を重ね、歴代最高の代表監督に上り詰めた。

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2021年7月30日のニュース