ペレナラとマオリと八百万の神 「みんなハカを勘違いしているけど、あれは―」

[ 2021年4月10日 10:00 ]

ラグビートップリーグ<日野・NTTドコモ>前半、トライを決めるTJ・ペレナラ(撮影・後藤正志)
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 ニュージーランドと日本の共通点を発見した。国土の形ではない。遠い先祖から来る民族性のようなものだ。

 先住民族にルーツを持つ選手で構成するラグビーの「マオリオールブラックス」が2014年に来日した。本家オールブラックスに迫る強豪だ。日本代表との対戦前、チームマネジャーがメディアにした自軍のプレゼンに、思わずひざを打った。

 「チームを四つの班に分けて活動や練習をしています。それぞれの班には、『水の神』、『風の神』、『地震の神』、『戦いの神』を意味する名前が付いています。試合前や練習前にグラウンドに礼を捧げます」

 なんと、八百万の神(やおよろずのかみ)信仰に似ているではないか。山にも森にも海にも、自然界のありとあらゆるものに神様が宿るという、日本の伝統的な考え方と重なる部分があるなんて。

 グラウンドに礼をするのは、多くのスポーツで見られる国内の作法。これも似ているではないか。太平洋をまたいだ先祖同士にスピリチュアルなつながりがあると感じ、1人で興奮をした。

 と、いう話を、NTTドコモのSH、TJ・ペレナラにしてみた。通訳を通して。マオリ族の血筋を引き、祖先への敬意を込めたタトゥーを左腕に刻むニュージーランド代表69キャップは、当方のこじつけ話と受け取らず、いつもの丁寧な口調で語り始めた。

 「マオリでも、大地の『地』がとても大事なものになっているんだ。みなさんはハカを勘違いをしているかもしれないけど、あれは戦いに向けたチャレンジのためではなくて、地面とのつながりをより感じるためにやっているんだ。マオリの選手は、練習前や試合前に、まず裸足でグラウンドに出る選手が多いんだ。それは、地面とのつながりを感じるため。自然に敬意を払うという点では、マオリと日本で似ているのかなと思う。おじぎはしないけど」

 ハカのリーダー、ハカの精神を語る。そのおかげで、オールブラックスの試合前の儀式は、本来、相手を威嚇するためのものではないと知る。グラウンドに礼をするのは、ラグビー最強国では一般的ではなく、マオリ族にゆかりがある選手においても馴染みが薄いことだと知る。7年前のあの説明は、聞き間違いだったのか。

 ペレナラは日本との共通点を感じているからか、来日1年目で、本当によくチームに馴染んでいる。卓越した技術と戦術眼を持っているのは、最初から分かっていたこと。驚かされたのは、勤勉さ。練習をいつ取材しても、全体メニューの後にNo・8、SO、WTBらをつかまえて、連携プレーを何度も何度も確認している。仲間を知ろうとするから、周囲を生かせられる。自分も生きる。チームの心臓となり、4勝2敗、ホワイトカンファレンス3位躍進を支えてきた。

 きょう10日の1次リーグ最終節、同2位の神戸製鋼戦は、主将のエラスマスが欠場したことで、ゲームキャプテンを初めて務める。勢い良く決勝トーナメントへ進みたいところだが、相手は昨季0―97で敗れた強敵。さあ、腕の見せどころだ。(倉世古 洋平)

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2021年4月10日のニュース