鶴竜が日本国籍取得 引退後に協会で指導者の道開けた…外国出身横綱4人目

[ 2020年12月11日 05:30 ]

取材に応じる鶴竜
Photo By 代表撮影

 モンゴル出身の第71代横綱・鶴竜(35=陸奥部屋)が日本国籍を取得した。10日付の官報で告示された。本名は従来と同じ「マンガラジャラブ・アナンダ」。外国出身の横綱で日本国籍を有するのは、米国出身の曙、武蔵丸(現武蔵川親方)、現役の白鵬に次いで4人目。国籍取得により、現役引退後に親方として日本相撲協会に残ることが可能となり、鶴竜は指導者として恩返しする思いを吐露した。

 鶴竜が国籍取得を知ったのはこの日の朝稽古後だった。携帯電話に多くの連絡が入っていて、その中には法務局からのものもあった。電話をかけ直して、国籍取得を確認した。都内の陸奥部屋で代表取材に応じた鶴竜は「良かった。今はそれだけ。かなり長かったので、やっとという感じ」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。鶴竜によると、取得までに約2年半かかったという。

 横綱の使命を全うすることに心血を注いでいた鶴竜が、指導者になろうと考え始めたのは30歳を過ぎてから。「16歳で日本に来て、相撲のことしか知らないし、相撲のおかげでここまでやってこられた。相撲協会に恩返しできるようにと思ったから、そういう決断に至った」。国籍取得により、指導者として相撲協会に残る道ができた。

 モンゴル出身では旭天鵬、時天空、朝赤龍、翔天狼が日本国籍を取得して引退後に親方になっている。現役では白鵬が昨年9月に取得している。午後には師匠の陸奥親方(元大関・霧島)と両国国技館を訪れ、八角理事長(元横綱・北勝海)に報告。「次にしっかり頑張るように」と言われたという。

 腰の負傷などで3場所連続休場中で、11月場所後の横綱審議委員会では「引退勧告」の次に重い「注意」が決議された。鶴竜自身は初場所(来年1月10日初日、両国国技館)以降の次に出場する場所で、結果を出さなければならないと捉えている。その渦中での国籍取得。「一つ悩みの種が消えたので、すっきりとまた相撲に集中できると思う」とプラスに捉えた。

 ▽年寄名跡襲名の条件 力士が現役引退後に日本相撲協会に残って親方になるには、年寄名跡が必要となる。「年寄名跡及び相撲部屋の親方・継承規定」には「年寄名跡の襲名は、日本国籍を有する者に限る」と明記されている。その上で「横綱・大関」「三役1場所以上」「幕内通算20場所以上」などを満たさなければならない。105の年寄名跡のほか、顕著な功績を残した力士には、その個人に限り年寄とする「一代年寄」が与えられる場合がある。年寄名跡を持たない場合でも、横綱は5年、大関経験者は3年、しこ名のまま年寄を名乗ることができる。

 ▼友綱親方(元関脇・旭天鵬)素直にうれしいし、良かった。国籍を変えることは複雑で難しいこともある。覚悟もいる。だけど頑張っていけばみんな理解してくれる。これで心もすっきりして相撲が取れると思う。

 ▼高砂親方(元関脇・朝赤龍)日本国籍をもらったと思うが、それよりケガもあるし、来場所頑張ってもらいたい。やっぱり長く取ってほしいと思う。

 ◆鶴竜 力三郎(かくりゅう・りきさぶろう=本名マンガラジャラブ・アナンダ)1985年(昭60)8月10日生まれ、モンゴル・スフバートル出身の35歳。01年九州場所で井筒部屋から初土俵。06年九州場所新入幕。12年夏場所で新大関。初優勝した14年春場所後に第71代横綱に昇進。19年9月に師匠の先代井筒親方(元関脇・逆鉾)が死去し、陸奥部屋に移籍。優勝6回。殊勲賞2回、技能賞7回。得意は突き、押し、もろ差し、寄り、投げ。1メートル86、155キロ。

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