男子テニス・内山靖崇 コロナ禍の逆境から目指す「世界TOP100」

[ 2020年11月11日 05:30 ]

2020+1 DREAMS

年内のトップ100への返り咲きを目指して欧州の大会を転戦中のテニス男子・内山(AP)
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 【THE PERSON】コロナ禍で一度は完全に止まったスポーツ界も少しずつ以前の姿に戻りつつある。テニス男子で世界ランキング102位の内山靖崇(28=積水化学)は、年内のトップ100への返り咲きを目指して欧州の大会を転戦中。コロナ下で戦う難しさや課題などを語った。

 既にPCR検査を20回以上も受けた。8月のウエスタン・アンド・サザン・オープンでのツアー再開から約3カ月。内山は「ほとんどが鼻からの(鼻咽頭拭い液)検査ですが、痛いですね。慣れるかなと思っていたけど、毎回痛い」と苦笑いした。これまでに、3度の帰国を挟みながら、予選を含めて米国で2大会、欧州で4大会に出場。現在は下部チャレンジャーツアーの大会に出場するためスロバキアに滞在している。

 ツアー中断中の世界ランキングは90位。再開後は腰痛や足首捻挫などケガに苦しみ、現在は102位に下降している。故障の要因はコロナ禍で約半年間、試合から遠ざかったことだけではない。例年はツアーの合間の一時帰国中や早期敗退した大会直後にウエートトレーニングをこなすが、感染予防対策で満足にジムを使えないことがコンディション調整を難しくしている。

 政府の定める帰国後2週間の隔離期間はスポーツ庁に活動計画書を提出すれば、厳しい規則の下でテニスの練習を許可されるが、多くのトップアスリートが練習拠点とするナショナルトレーニングセンターには入れない。民間のテニスクラブが練習場になるが、更衣室やジムの使用は不可。ツアー大会でも敗退後はジムなどの設備が充実した本会場に入れないルールを導入している大会が多い。内山は「ツアー再開後は、まともにウエートトレができていないので、ケガのリスクが増えている」と頭を悩ませる。

 大会により、感染予防対策に差があるのも課題だ。ツアー大会は基本的にバブル(隔離エリア)を作って実施。全米オープンなどツアー再開直後の大会は対策が徹底されていたが、徐々にルーズになりつつある。さらに資金の乏しいチャレンジャーツアーではバブルを採用していない大会が多い。内山は感染リスクを考慮して全仏オープン直前のイタリアでの下部大会出場を回避しており「チャレンジャー(ツアー)は外出制限のない大会が多い。悪い意味で慣れてきている感じはある」と指摘した。

 年内の世界100位以内返り咲きを目指す内山は、今回の遠征でチャレンジャーツアー2大会に出場予定だ。世界ランクが来夏の東京五輪出場に直結するだけに「ツアーを回らないとランキングが下がるので試合に出るしかない。選手として生きるか、人として命を守るか、どっちが正解か分からないが、五輪が一番の目標であることは変わらない。今はほぼ欧州でしかツアーがないので欧州の選手に有利だが、ここを耐えて良い形で来年につなげたい」と力を込めた。葛藤を抱えながら、前例のないコロナ下のツアーと必死に向き合っている。(木本 新也)

 ◆内山 靖崇(うちやま・やすたか)1992年(平4)8月5日生まれ、札幌市出身の28歳。小2からテニスを始め、中1から錦織圭と同じ米IMGアカデミーに留学。11年にプロ転向。13年に国別対抗戦デビス杯インドネシア戦で日本代表デビュー。19年ウィンブルドン選手権で4大大会初の本戦出場を果たした。1メートル83、75キロ。右利き。

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2020年11月11日のニュース