追悼連載~「コービー激動の41年」その104 レイカーズ初来日を阻んだ同時多発テロ
もう“時効”だと思うので19年間、私の心の中で悶々としていた出来事を記しておく。
日本では1990年のサンズ対ジャズ戦を皮切りに、プレシーズン・ゲームだった昨年10月のラプターズ対ロケッツ戦を含め、過去7回の「NBAジャパンゲーム」が開催されている。昨年を除けばNBAの公式戦兼開幕シリーズ。90年以降は92年、94年、96年、99年、そして2003年に開催された。
ただし2001年に開催されるはずだったプレシーズン・ゲームがあった。開催日は10月13日と14日で場所は東京ドーム。スポンサーは米国を代表する自動車メーカー、フォード社だった。日本で2試合を行う予定だったのは、同年6月のファイナルで連覇を達成したばかりのレイカーズと、同じ西地区パシフィックに所属するウォリアーズ。ご存知の通り、そのときのレイカーズにはコービー・ブライアント(当時23歳)とシャキール・オニール(同29歳)がいて、監督はフィル・ジャクソン(同56歳)だった。このあとスリーピート(3連覇)を達成することになるNBAのチャンピオン・チームが2人のスターと名将を率いて来日するはずだった。
ウォリアーズには得点力のあるアントワン・ジェイミソン(当時25歳)がいて、やがてウィザーズで大活躍するギルバート・アリーナス(同19歳)が新人としてロースターに名を連ねていた。
7月末だったと思う。私は当時の編集局長から「頼んだぞ」と来日から試合、帰国に至るまでのすべての原稿を任され、胸躍る思いだった。記憶がおぼろげになってしまったが、最後まで懸案だったのがチームに対する高額の保険金の交渉。これがクリアされたので、すでに私の手元にはレイカーズとウォリアーズのチーム・ロゴ、そして試合日を記した記念Tシャツが届いていた。
しかし9月11日。すべてが崩れ去った。日本時間の12日午後10時すぎ。外信部のデスクを務めていた私は早版の原稿をすべて出稿して一息ついていた。真横のテレビで見ていたのはニュース番組。ところがすぐに画面がニューヨークに切り替わった。ワールドトレードセンターのツインタワーに2機の民間航空機が激突するショッキングな映像。これが米同時多発テロの始まりとなった。
新型コロナウイルスの感染拡大と同様、世の中はスポーツどころではなくなった。私が書く原稿は来る日も来る日もテロ関連。当然のことながら、NBAのジャパンゲームは来日会見を行う前に中止という残念な結果につながっていった。10月7日に米軍はアフガニスタンに侵攻。タリバン政権に対して戦闘状態に入った。その6日後に日本でNBAの試合など行えるわけなどない状況だった。
野球と陸上競技に汗を流していた私が13歳でバスケットボールを始めた理由は、当時民放で録画放送されていたNBAの試合を見たから。そこで目にしたのは、フリースローラインの外側から“スカイフック”という必殺技でブザービーターを決めたカリーム・アブドゥルジャバー(当時バックス)だった。
彼が1975年にレイカーズに移籍すると「レイカーゴールド」と「ロイヤルパープル」という色のユニフォームが私のあこがれになった。だからこの仕事を選んだわけではなかったが、スポーツ紙にNBAが登場するようになり、「日本でレイカーズの試合を見たい」という思いが強くなった。
あともう少しでその夢はかなえられたはずだった。だがテロという名の憎き敵が、あの“一瞬”を奪い去った。
ブライアントもオニールも日本のファンの前でプレーしていたと思うと、19年が経過した今も悔しさがこみあげてくる。ファーストネームが「KOBE」というプレーヤーにとって、日本は縁のある場所だったはず。そしてレイカーズは現在もなお来日を果たしていない。
幻の記念Tシャツは未使用のまま。カメラで撮影はしてみたが、結局のところ一度も着ていない。さてどうしよう…。ブライアントに“運命の日”があったように、私にもあった。永遠となってしまった空白の2日間。時間だけが刻々と過ぎ去っている。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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