“最後の砦”NTCとJISS 考えておきたい完全閉鎖判断の是非と第2波到来時の対応

[ 2020年5月27日 09:00 ]

味の素ナショナルトレーニングセンター
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 全国で緊急事態宣言が解除された。インターハイや甲子園の中止が決定した一方、プロ野球は無観客ながら6月19日の開幕が決定。その他のスポーツでも各競技団体が練習再開や試合(大会)再開の指針を示し、つい3カ月前までは当たり前だった風景を取り戻す動きが出てきた。

 1年延期となった東京五輪に向けて、ほとんどのアスリートも不自由な練習環境に置かれてきたが、少しずつ、日常を取り戻していくだろう。5月13日には競泳男子の瀬戸大也らが、萩生田光一文科相に対して東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)と国立スポーツ科学センター(JISS)の利用再開を訴えた。約1カ月半、閉鎖されていた両施設も、段階的な利用再開が始まった。

 もちろんそれ自体は歓迎されるべきことだが、2点、考えておきたいことがある。一つは、本当に完全閉鎖の判断は正しかったのかということ。もう一つは、新型コロナウイルスの第2波が来た時の対応である。

 スポーツ界も社会の一員として感染拡大防止に努めることは当然であり、医療従事者や両施設の地域住民などに過度の負担や不安を掛けないことが望まれる。一方で五輪の代表権を獲得済みか、それに準ずるようなトップオブトップのアスリートが、身体や技術を維持するために練習やトレーニングすることは、果たして「不要不急」だったのか。

 特にNTCとJISSは、他に代えのきかない国内最先端の施設であり、民間のトレーニング施設が次々と閉鎖されたコロナ禍の中では、トップアスリートにとって“最後の砦”と見られていた。一般人は立ち入ることができず、セキュリティーも万全。その気になれば安全、健康管理を徹底した上で、利用時間や人数を限定しながら運用を継続できたのではないか。実際、プロ野球では各球団施設での個人練習が続けられ、そうした活動を通じての感染者は皆無だった。置かれている立場、環境の違いは理解しつつも、そうした思いは残る。

 過去は変えられない。だが未来に備えることはできる。懸念される第2波が来てしまった時、あっさりと完全閉鎖するようなことがあってはならない。1カ月休めば、取り戻すのに3カ月を要すると言われるスポーツの世界。東京五輪へのカウントダウンが再び進む中、再び閉鎖となれば、負の影響はさらに大きくなる。

 そしてもう一つ、万が一の場合もトップアスリートが不自由なく活動を維持できるように、今から世論形成をしていくことが大切と考える。国民から反感を買い、白い目で見られることを望むアスリートはいない。確かにほとんどの学生スポーツは中止に追い込まれたが、同調圧力で押し付けず、背中を押してあげられる世の中であってほしい。(記者コラム・阿部 令)

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