田中光哉が語るパラテコンドーの世界 目標と夢に向かって歩き続けた怒濤の3年間
東京パラリンピックで新競技として採用されるテコンドー。競技歴3年で日本代表の座を射止めた男子61キロ級の田中光哉(27=ブリストル・マイヤーズスクイブ)は、競技を始める前は東京都障害者スポーツセンターに勤務していた経歴を持つ。パラスポーツに精通する田中が、競技の魅力やパラ選手独自の練習方法や、1年延期になった東京大会への思いを語った。
上肢障がいの選手が対象で、華麗でスピード感のある足技の応酬が繰り広げられるテコンドーは、別名「足のボクシング」と呼ばれる。1ラウンド2分×3回の試合形式で実施される。五輪種目のテコンドーは胴体と頭部への蹴り、胴体へのパンチが有効だが、パラでは胴体への蹴りのみが有効。激しい蹴り合いの中で、胴体のみへ蹴るためのコントロール技術と、それを実現するための上半身の強さが重要だ、と田中は語る。
「中段(胴体)を蹴るつもりで上段(頭部)を蹴ってしまうのは、身体のどこかが傾いているから。19年の世界選手権の準々決勝では、勢い余って相手の頭部を蹴って気絶してしまい、失格負けになったことがあります。どんな状態でも上半身をぶらさずに一定の姿勢で蹴り続けられるよう、普段の姿勢から気をつけています」
先天性の両上肢尺側欠損障害で、生まれつき肘下の骨(尺骨)や指の一部がない。健常の選手と筋肉の形や骨の形状が違う中で、工夫しながら上半身(特に肩や胸回り)の強化を進めている。
「回し蹴りなどの空中技も同様で、上半身がぶれると全て持って行かれてしまう。僕の場合、左右で腕の細さや重さが違うので、砂の重りを付けて遠心力とスピードを感じながら上半身のぶれを少なくできるようにしています。1年くらい前からそういう練習を始めて、やっと効果が出てきた気がします」
大学入学時は英語教師を目指していた田中だが、2年の時にオーストラリアに留学。障がいに対する人々の認識や理解の深さに居心地の良さを感じ、パラスポーツに興味を持った。3年のときには東京パラリンピックの開催が決定。東京大会に関わるため、15年春に東京都障害者スポーツセンターへ就職した。
幼少期から6年間剣道を習い、小学4年生から大学までサッカーに熱中するなどスポーツ好きだが、当初は競技を始めるつもりはなかった。しかしパラスポーツの普及活動や選手の発掘事業に携わるうちにパラリンピック出場を志すようになった。今までのスポーツ経験などを加味し、テコンドーを選択。16年リオデジャネイロ・パラリンピックに出場した選手達の活躍する姿にも後押しされ、17年から本格的に競技を開始した。
「短いキャリアで代表になるためにも、国内の誰にも負けないくらい練習しました。朝昼晩で約2時間ずつ、合計6~7時間くらい。多すぎな気もしますが、精神的な自信にも繋がっています」
努力は実を結んだ。20年1月下旬に行われた東京パラリンピック日本代表決定戦(東京・日本財団パラアリーナ)で優勝。夢舞台への切符を勝ち取った。新型コロナウイルスの影響で東京パラリンピックは1年延期となったが、田中の内定は維持。現在出稽古やジムには通えていないが、徒歩圏内にある道場で日夜汗を流す。少しでも世界との差を埋めるべく、課題として挙げるコンビネーション技の精度を高めるための練習に重点を置く日々だ。
「東京での目標はメダル獲得。僕自身表彰台に立ちたいし、障がいのある人にも試合を見てもらって、“障がいがあってもいろんなことに挑戦していける”ってことをパラリンピックでの活躍を通じて伝えることが僕の夢です」
目標と夢を追い求め、パラテコンドーの新星は歩み続ける。
(記者コラム・小田切 葉月)
◆田中 光哉(たなか・みつや)1992年(平4)7月22日生まれ、福岡県久留米市出身の27歳。福岡・久留米高時代はサッカー部に所属。J1鳥栖のサポーターで、好きな選手は元日本代表MF小野伸二。1メートル76、61キロ。
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