サニブラウンが“日本最速”9秒97!桐生の記録を0秒01更新、今季世界歴代6位タイ

[ 2019年6月9日 05:30 ]

陸上 全米大学選手権第3日 男子100メートル決勝 ( 2019年6月7日    米テキサス州オースティン )

男子100メートル決勝で9秒97の日本新記録をマークし、3位に入ったサニブラウン
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 陸上男子のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が、男子100メートル決勝で9秒97(追い風0・8メートル)の日本新記録をマークして3位に入った。桐生祥秀(23=日本生命)が17年9月に出した9秒98を0秒01更新した。日本人で2度目の9秒台を出したのは初めて。同タイムは今季世界歴代6位タイの好記録で、1932年ロサンゼルス五輪男子100メートルで6位入賞した「暁の超特急」こと吉岡隆徳以来となる五輪ファイナリストも見えてきた。

 この男、底が知れない。1921年からの歴史を持つ全米大学選手権は、各国の陸上界の期待を背負った留学生も多く出場する「世界大会」。サニブラウンは順位こそ3位だったが、記録は2年ぶりの日本記録更新となる9秒97。それでも「あまり実感はない。もう少し速く走れたかな」とケロリ。日本陸上界の歴史に名を刻んでも満足しない。本気で「地上最速」を求める男は常に貪欲だ。

 男子400メートルリレーで優勝を決めた50分後に“2冠目”を狙った男子100メートルで快挙を達成した。優勝したオドゥドゥル(ナイジェリア)のスタートの飛び出しを「予想してなかった」というが、取り組んできた「最初の3歩」でしっかり地面を捉え、中盤からは1メートル88の長身を生かした大きなストライドで猛追。「スムーズに出られて、練習してきたことが身になってきた」と内容には納得の表情だ。

 多くの五輪メダリストを育てたフロリダ大のマイク・ホロウェイ監督(60)は表彰式後に教え子の肩を抱き寄せ「誇りに思う」と語り掛けた。「これまで少し怠けてしまうところがあったが、それは卒業した。一生懸命に練習している」と精神面の成長を喜んだ。来週には大会の映像を踏まえながら修正点を話し合うという。100メートルの日本記録更新にとどまらず「世界屈指のランナーになること」と、さらに高い目標を課している。

 サニブラウンの9秒97は今季世界6位タイの好タイムで、上位8人が進める世界のファイナリストになる可能性も十分にある。決勝を制したオドゥドゥルは今季世界1位タイ、2位の選手も今季世界4位と高水準の大会を振り返り「凄い楽しい。日本でこんな体験はめったにできないと思うので、こっちに来て良かった」と晴れやかに語った。

 大会前の地区予選では全米制覇をにらみ「僕対アメリカ」と発言したが、今後はおのずと「僕対世界」に目標は切り替わる。目指すは32年ロス五輪の吉岡隆徳以来となる東京五輪での男子100メートルファイナリスト。その先にはメダル獲得も視野に入れる。「まだ今後も速いタイムが出ると思っているので、その都度更新していければ」。まずは今秋の世界選手権(ドーハ)出場を決めるため、今月下旬の日本選手権(福岡)で日本記録保持者としての走りを見せつける。

 《日本男子の五輪短距離ファイナリスト》男子100メートルでは1932年ロサンゼルス五輪で“暁の超特急”こと吉岡隆徳が決勝に進出して6位入賞した。それ以来、決勝進出者はいない。男子400メートルでは92年バルセロナ五輪で高野進が8位入賞を果たしている。

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