【貴景勝独占手記】「勝っておごらず、負けて腐らず」 横綱になることができれば四字熟語を

[ 2019年3月28日 10:00 ]

大関昇進伝達式で口上を述べる貴景勝。右は千賀ノ浦親方(撮影・亀井 直樹) 
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 貴景勝(22=千賀ノ浦部屋)が大関に昇進した。27日、大阪市内で行われた昇進伝達式では「武士道」を入れた口上で決意を示した新大関。スポニチ本紙に寄せた手記に、そこに込められた思いも語った。 

 【貴景勝独占手記】口上とは何かと考えた時、伝達式は思いを述べる場であると思いました。四字熟語を使えば、まずその意味がフォーカスされ、自分らしさ、自分自身が薄れてしまうような気がしました。横綱になることができれば、前師匠の貴乃花親方にも忠誠があるので、四字熟語を入れてみたい。これから先、最高位を目指す上でも、初めての口上は自分らしくいこうと決めました。

 口上は「大関になってから考えろ」と自分に言い聞かせてきたので、ちゃんと考えたのは千秋楽翌日です。本は読まず、どうしようかと考えた時に、スパッと浮かんだのが「武士道精神」でした。自分の根幹にある「勝っておごらず、負けて腐らず」は中、高時代に読んだ武士道の本から学んだ言葉。勝負師として、これを自分の中に叩き込んでいなければ俺は腐っていた。元々弱い人間だから、その言葉に何度も救われてきました。

 つらいから泣く、うれしいから喜ぶ、そんな感情を表に出さないのが武士道です。武士の情け、義理人情を重んじて生きる。男として、恩を仇(あだ)で返すような裏切り行為はあり得ません。支えてくれた人には恩返しをしなければと思っています。武士道には、「義」正義、「勇」勇敢、「仁」情け、「礼」敬意、「誠」誠実、そして名誉と忠義があります。名誉は誇りやプライド、忠義は忠誠心。全てに「勝っておごらず、負けて腐らず」が宿り、全てを磨いて自分自身を成長させます。

 武士道精神の後に続けた「感謝の気持ちと思いやり」。これは埼玉栄高のスローガンです。地元を離れて初めて外の世界に触れ、人間的に成長させてもらいました。高校3年間がなければ今の自分はない。言葉を胸に刻み、多くの人に支えられ、ここまできました。自分の力でのし上がったなんて思いません。強くなり態度が変わるような人間にもなりたくない。力士は武士の一部。相撲はスポーツとは違います。歴史と伝統を重んじ、力士たるものどうあるべきかを究める先に、最後の扉があるのだと思います。  (大関・貴景勝)

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