貴乃花氏 不撓不屈のエール、貴景勝に「まだまだこれから」

[ 2019年3月28日 10:00 ]

貴景勝(左)と元師匠の貴乃花氏
Photo By スポニチ

 【新時代の大関 貴景勝を語る(上)】初土俵から28場所で大関昇進を果たした貴景勝。元師匠である元貴乃花親方の貴乃花光司氏を上回る史上6位のスピード出世を果たした強さの秘密はどこにあるのか。今も心の師である貴乃花氏や現役時代に胸を合わせた荒磯親方(元横綱・稀勢の里)らがそれぞれの視点で証言。3回連載で紹介する。

 相撲部屋の師匠にとって弟子は自分の子供と同じ。それは相撲界を離れても変わることはない。貴乃花氏が貴景勝を初めて指導したのは、佐藤少年がまだ丸刈り頭の小学4年のとき。当時の印象を「礼儀正しく暴れ馬な少年。はたきや引くことを知らない性格の片りんはその頃からあった」と振り返る。

 大一番で無類の度胸の良さを見せる貴景勝だが、自身は「甘えやすい性格」と自己分析する。元師匠はその弱点を見抜き、常に手綱を締めて指導してきた。実は最近も2度、大変なけんまくで怒ったことがある。一つは昨年の九州場所14日目に高安に敗れ、千秋楽に初優勝を持ち越したとき。そして、大関昇進を逃した初場所千秋楽の豪栄道戦の直後である。貴景勝はその立ち合いで右足裏の筋膜を切った影響もあって、あっさり引いて土俵下に落ちた。

 だが、貴乃花氏はケガは言い訳にならないと指摘する。「死に物狂いで土俵に上がって負けるのなら仕方がない。土俵に上がるということは、自分の生きざまを見せること。力を出し切るだけの能力と気力、体力を持たなきゃいけない」と苦言を呈した。そして「人生が懸かった一番にしては、あまりにも気力がないところが出てしまった。自分に対する甘さがあるからそういう結果になる」と続けた。

 貴景勝はその言葉を正面から受け止め、自分の弱点と向き合い、大関の座を射止めた。踏まれれば踏まれるほど強くなるのは、師匠も同じだった。貴乃花氏は「多少思い通りにならない相撲で星を落としてはいますが、それを土台にして自分のやるべきことを手探りで見つけ出せるのが彼の持ち味。本人が思い描いている以上に、やる気と根気が彼にはあります。でも、まだまだこれからです」。ここがゴールではないことは、お互いによく分かっている。

続きを表示

2019年3月28日のニュース