止めたのは日本の“希望”稀勢の里

[ 2010年11月16日 06:00 ]

白鵬(左)を寄り切りで下す稀勢の里

 【九州場所2日目】大器が存在感を示した。大歓声に包まれながら花道を引き揚げた稀勢の里は支度部屋でも荒く息をついた。大熱戦だった。立ち合いで押し込まれたものの、慌てず左へいなした。そして、冷静に前へ、前へ出た。横綱の突っ張りに「いつも(応戦して)体勢を悪くする。我慢した」。土俵際で体を入れ替えられてもこらえて左四つに。横綱のすくい投げ、内掛けをしのぎ寄り切った。

 「最後まで必死で、手応えとかなかった。土俵際で逆転されることもあるから。勝ち名乗りで、やっと勝ったんだなと思った。でも実感がわくには時間がかかりそう」
 日本人の大関候補1番手と期待されてきた。だが、ここ2場所連続で7勝8敗と負け越し、東前頭筆頭まで番付を下げた。師匠の鳴戸親方(元横綱・隆の里)は「本人が不本意だと思っているはず。胸に秘めたものはあるでしょう」と代弁する。その気持ちは稽古に表れていた。秋巡業では土俵外で行う“山稽古”を敢行。さらに横綱に胸を出してもらい1日計30番以上取るなど必死に取り組んだ。
 今場所は白鵬の連勝記録がどこまで伸びるかが最大の焦点だった。この取組は平幕でも存在を大いにアピールできる最高の舞台だった。双葉山の連勝を止めた安芸ノ海は、その後、横綱まで昇進した。たった一つの白星で、脇役が主役になることもできる。稀勢の里も当時の映像を見たことがある。連勝に待ったをかければファンの記憶に長くとどめられる。特別な気概で土俵に上がっていた。
 白鵬からは08年秋場所以来、2個目の金星となる。だが、稀勢の里の顔は喜びに緩むことはなかった。「これが自信になり、いい方向に進んでいければ」。着実に力をつけた日本人力士のホープが大金星だけで満足できるはずはない。

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2010年11月16日のニュース