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J2新潟 現象より原因に対応する勇敢采配

[ 2022年5月6日 04:59 ]

4日の金沢線戦で先制ゴールを決めた伊藤(中央)はチームメートと喜びを分かち合う
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 【元アルビ・梅山チェック 4日新潟1―0金沢】前半の新潟は、最終ラインとボランチのユニットと、FWと攻撃的なMFのユニットが分断されていた。金沢がコンパクトな陣形を保ってプレッシングをかけてきたことが理由で、相手陣内に安定してボールを運ぶことが難しい状態だった。金沢が前に出てくるということは、背後は空いている。それを全員が理解しているがゆえに、相手の背後を狙う長いパスが多かった。

 先制点は自陣で奪ってから島田がサイドのスペースに展開。相手を広げて薄くなった中央を利用して、この日トップ下に入った伊藤が決めた。前半では数少なかった味方同士の距離が近く、テンポよくつないで生まれたゴールだった。昨季であれば、相手が前からプレッシャーに来ても、短いパスにこだわって打開を試みたと思うが、今季はつなぐことよりもゴールに迫るという目的とそのための優先順位を明確にして、長短のパスを効率よく使い分け、より賢く戦えている。

 そういう意味では、自陣でのボール保持は攻めあぐねているという一つの見方の裏に、相手を引き出して背後を取るというテーマも含んでいることを知っておくと、今何を狙ってボールを保持しているのか、ピッチからのメッセージを読み解くことができるだろう。

 後半は一転、金沢にボールを握られ、奪いに行っても前進されてしまうシーンが増えた。ボール保持率では常に相手を上回ってきた新潟にとって、これまで守備といえば失った瞬間、その場で奪い返す速さが強みだった。だが、しっかりとボールをつないでくるチームに対して、いつどこからどのように奪うのか、今後は組織的な守備にも注目したい。

 さらに1点リードの残り9分。谷口、伊藤に代えてゲデス、高木を投入した。これは押し込まれているから守備的な選手を投入してゴール前を補強するのではなく、その出どころをふさぎながら、前掛かりになっている相手にカウンターを仕掛ける狙いの起用。現象よりも原因に対応し、逃げ切るのではなく攻撃的な姿勢を貫く意思をピッチに伝えるもので、非常に勇敢な采配だった。

 群雄割拠なJ2リーグで簡単な試合はない。さらに選手心理としても、奪いに行ってもかわされたこの日は、思い通りにいかない時間を長く感じただろう。それでもしぶとく勝ち点を積み上げているところに、上位戦線を勝ち抜くチームのたくましさを感じた。

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2022年5月6日のニュース