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どうなる五輪参加…久保 ピッチ外の騒動も糧に メンタル強さに期待

[ 2016年7月31日 10:00 ]

クラブ側の要望でリオ五輪出場が危ぶまれているFW久保。ここ2カ月ピッチ外要因と向きあう出来事が多い

 正直、ここまでリオ五輪出場へのハードルが高くなるとは思っていなかった。スイス1部ヤングボーイズに所属するU―23日本代表FW久保裕也(22)のことだ。

 26日の欧州CL3回戦シャフタール・ドネツク戦後に、ブラジルで事前合宿を行う手倉森ジャパンに合流予定だった。ところがヤングボーイズ側は元スウェーデン代表FWゲルントの負傷を理由に派遣を拒否。リオ五輪1週間を切った中での急転は、日本協会の田嶋会長も遺憾の意を表すなど大騒動になった。霜田ナショナルチームダイレクターが急きょスイスに飛んで再交渉し、何とか条件付きでの協力までこぎ着けたが依然、五輪参加は正式決定していない。

 以前報じたが久保は5月にも五輪出場のピンチがあった。4月中旬に右膝靱帯(じんたい)損傷。全治1カ月と診断されたにもかかわらず、5月中旬になっても膝は回復しなかった。チーム側からは手術を勧められた。メスを入れれば全治3カ月。五輪は絶望的だった。日本代表ドクターやイタリアのドクターの診断を仰ぎ、そこで「手術なしでも膝は完治する」といわれ危機を脱した。

 現在の状況と比較すれば“軽度”に感じてしまうが、そもそも手倉森ジャパン合流もブラジル事前合宿初日の21日からだった。クラブ側の要望で時期が遅れることになった経緯もある。

 ヤングボーイズの姿勢や日本協会の交渉力について思うところはある。だが久保裕也に関して思うのは『良い経験をしている』ということだ。

 右膝の手術を勧められた当日は悩みに悩み、セカンドオピニオンを求める結論を自ら出した。23日のリーグ開幕ザンクト・ガレン戦では「結果を残す」と宣言していた通り、1得点を奪った。そして最大のピンチとなった今回…。先発した30日のリーグ・ルガーノ戦では何度もチャンスを作り出した。

 この2カ月間、ピッチ外要因と向き合う出来事が多かった。だが常々「こういう時こそ地に足を付けることが大事」と強調していた。周囲に振り回される事例が続いても、自身の気持ちは振り回されないようにした。J2京都時代から久保を見てきているが、ここにきてメンタルは一層強くなった。

 だからこそ五輪に出場できれば、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか期待してしまう。五輪出場を決めた1月のアジア最終予選準決勝イラク戦以上の衝撃をもたらしてくれるのではないか、と。今は日本協会とヤングボーイズの話し合いが上手く進むことを切に願っている。(記者コラム)

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2016年7月31日のニュース