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浦和戦のスタジアムで感じる違和感 バックパスになぜ拍手?

[ 2016年6月6日 10:15 ]

盛り上がる浦和サポーター

 浦和の試合をスタジアムで観戦すると、違和感を覚えるシーンに出くわす。フィールド選手からGKへのバックパスに対して、サポーターが拍手を送るのである。確かに、プレスをかけられた状況でクリアや苦し紛れのロングキックをせずに、バックパスで攻撃を作り直すことがベターな選択な場面もあるだろう。だが、浦和サポーターはGKへのパスに、ほぼ毎回、拍手する。これは、いかがなものか。

 攻撃の優先順位は、まずはシュート。次にシュートに直結するプレー、というようにゴールから逆算すべきで、最後尾に下げるGKへのバックパスは最後の選択肢であるべきだ(もちろん、時間帯やスコアによっても変わるが)。選手は本当に前方にパスを出せない状況だったのか、ファーストタッチにずれはなかったか、など、バックパスに至る過程に判断、技術的なミスがなかったかを見極めた上での拍手なら、うなずけるが。

 全てのバックパスに温かい拍手が送られれば、スタジアムで観戦するサッカー少年、少女やボールパーソンは何を感じるか。所属チームに戻った時、前に行くプレーを簡単に放棄して、安易にGKに下げる選択をしかねない。たかが、拍手。されど拍手。大袈裟かもしれないが、ただでさえ、勝負を仕掛ける意識が希薄な日本サッカーの未来にかかわる応援スタイルとも言える。

 ACLで日本勢は8強に1クラブも残れなかった。一方、豊富な資金力で有望選手、監督の“爆買い”を続ける中国勢は2クラブが準々決勝に進出。Jリーグ勢の存在感は年を重ねるごとに薄れている。補強や育成環境の整備を含めて資金力で勝てない中、累計入場者数1000万人超のJリーグサポーターの“目”が日本を強くする要素の1つであることを忘れてはならない。来季こそは、JクラブがACLを奪還する瞬間を見届け、心からの拍手を送りたいと思う。だからこそ、あえて浦和サポーターに物申した。(記者コラム・木本 新也)

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2016年6月6日のニュース