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J・セザール 王国救った!不屈守護神「あと3段上がる」

[ 2014年6月30日 05:30 ]

PK戦でチリに勝利し、駆けだすブラジルイレブン。右端はうずくまるネイマール

W杯ブラジル大会決勝トーナメント1回戦 ブラジル1―1(PK3―2)チリ

(6月28日 ベロオリゾンテ)
 守護神が王国を救った。開催国のブラジルは28日(日本時間29日)に決勝トーナメント1回戦でチリと対戦し、延長1―1で突入した今大会初のPK戦を3―2で制し、6大会連続の準々決勝進出を決めた。GKジュリオ・セザール(34=トロント)がPK戦で2本をセーブ。10年南アフリカ大会で準々決勝敗退の責任を問われた正GKは、劇的な勝利に涙を浮かべた。
【試合結果 決勝T&日程表】

 左ポストを叩いたシュートが枠外にこぼれた瞬間、ジュリオ・セザールがほえた。延長を含めた120分間を1失点で乗り切り、PK戦で2本防いで勝利。「4年前の南アフリカでもインタビューを受けた。あの時は悔しくて悔しくてたまらなかった。でも、きょう泣いているのは喜びなんだ」。涙を流しながらインタビューに答えた不屈の守護神が、王国ブラジルを敗退危機から救った。

 4年前は失意のどん底にいた。10年7月2日、準々決勝のオランダ戦で自らの判断ミスから失点し、厳しい批判が集まった。今大会もここまで目立った活躍はなかったが、この日は違った。後半19分にはアランギスの決定的なシュートを左手で好セーブ。PK戦直前には主将のチアゴ・シウバに「3本止める」と宣言し、1人目のピニージャをほぼ正面で、2人目のサンチェスを右に跳んで止めた。相手に十分すぎる重圧を与え、5人目ハラの失敗を誘発した。

 「自分の仕事に集中した。家族は心臓まひを起こしそうになったかもしれないけど」とセザール。数カ月前はW杯のピッチに立っていることすら想像できなかった。所属していたQPR(イングランド)が12~13年シーズン後に2部降格。4億円超の年俸がネックとなり、移籍に失敗した。昨年9月には練習中に左手を骨折。序列は3番手に下がり、今年1月までの前半戦で出場は公式戦1試合だった。

 転機は2月。QPRで同僚だったライアン・ネルセン氏に誘われ、同氏が率いるトロント(米MLS)に移籍。欧州と比べてリーグの格は落ちるが、出場機会を得て実戦感覚を取り戻し、W杯に間に合わせた。4年前も家族や仲間の励ましに救われたというセザールは「チャンスをくれたネルセンには本当に感謝しなければ」と振り返った。

 QPRでくすぶっていた時期には近所の公園で11歳の息子と「秘密の練習」に励んだ。プライドをかなぐり捨てられたのも、全てはマラカナンで世界の頂点に立つため。「まだ何も成し遂げていない。あと3段、階段を上らないといけない」。どん底からはい上がった男は、力強く言い切った。

 ◆ジュリオ・セザール 1979年9月3日、ブラジル・リオデジャネイロ州生まれの34歳。97年に地元の名門フラメンゴとプロ契約。05年1月にインテル・ミラノに移籍し、05~06年シーズンからは正GKとして活躍。QPR(イングランド)を経て、今年2月に米MLSのトロントにレンタル移籍した。04年に代表デビューし、通算出場84試合。1メートル79、79キロ。利き足は左。

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