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2度あった監督交代の可能性 16強で封じ込められた批判

[ 2010年7月10日 16:20 ]

2月14日、韓国に惨敗して東アジア選手権3位に終わり、険しい表情で会見する岡田武史監督

 W杯本大会前、岡田ジャパンはバッシングの嵐の中にいた。国際Aマッチ4連敗、そして岡田監督の“進退伺”。大会直前まで指揮官の解任論が叫ばれ、崩壊危機にあったチームが決勝トーナメント進出を果たしたことで、諸々の批判は封じ込まれた。しかし、協会の対応に問題はなかったのか――。

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 今年に入って岡田監督は2度、退任の危機に陥った。1度目は2月。東アジア選手権で韓国に惨敗しメディア、サポーターから解任を求める声があがった。韓国戦翌日の2月15日、岡田監督は犬飼会長、原技術委員長に呼び出された。

 「ああいう試合をして申し訳ありません」。謝罪する岡田監督に、犬飼会長は「日本人らしいサッカーをしているんだから、これを続けないといけない」と返し、続投で決着した。だが協会は水面下で後任監督選定に着手していた。3月のバーレーン戦に勝ったことで表面化しなかったが、監督交代の可能性はあった。

 2度目は5月24日の韓国戦。0―2で2月に続いてライバルに連敗。試合後に岡田監督は犬飼会長に進退を伺った。「僕が監督を続けると会長もいろいろ言われますよ。いいんですか」。会長は「心配するな」と返答した。翌日指揮官は「あれは冗談」と取り繕ったが、反響は大きかった。ある協会幹部は「考えられない。W杯で監督としてやっていけるのか」と怒声を上げた。「ノイローゼでは」という関係者もいた。バッシングが続いて自信をなくし精神的に追い込まれていたのは事実だった。選手にも動揺があった。ある選手は「進退伺まで言って、もうダメなんじゃないか」と漏らした。

 ところが、これがチームにプラスの作用をもたらした。スイス合宿中の5月27日に行った選手ミーティングでは「もう自分たちでやるしかないんじゃないか」という意見が出た。同調する選手は少なくなかった。監督に頼ってばかりでは勝てない。非常事態に直面した選手たちは自ら考えるようになった。

 南アフリカでも何度か選手だけのミーティングを行った。ピッチの中でも選手たちは自立した姿を見せた。デンマーク戦では相手のパワープレーに対応するため選手の判断で阿部を最終ラインに下げた。岡田監督は「彼らは自分たちで判断した。ここまでできるようになったんだと自分にとってはうれしい驚きだった」と喜んだ。しかし、それは結果論にすぎない。

 一歩間違えば崩壊する危険もあった。2月の時点で岡田監督を続投させたとき、犬飼会長は「ここで代えるのはリスクが大きい」と説明した。だが、本当にそうだったのだろうか。ひそかに後任の選定を進めていたとなると協会の指揮官に対する信頼にも疑問符はつく。結果としてW杯で16強入りしたことで批判は封じ込まれた。しかし、監督の人選、進退の判断については反省点も多い。(特別取材班)

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2010年7月10日のニュース