愛希れいか 「大奥」徳川家定役 「自分から引き算するお芝居が難しかった」

[ 2023年11月8日 10:20 ]

「大奥 幕末編」で徳川家定を演じる愛希れいか(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】俳優の愛希れいか(32)がNHKのドラマ「大奥 幕末編」(火曜後10・00)で江戸幕府13代将軍・徳川家定を演じている。愛希は元宝塚歌劇団月組娘役トップスター。新たに挑んでいる映像作品への思いを明かした。

 ──家定はどんな人物ですか?
 「原作を読ませていただいて、家定は複雑な環境で育って人を信用できず、生きることもあきらめかけていた人という印象を受けました。演出の方の言葉をお借りすると、受け入れる強さを持った人、とても聡明な人。私自身は、家定は愛情を受けずに育ちながらも自分が大切にしたいと思う人への愛は深い人だとも感じました」

 ──どのように演じようと思いましたか?
 「演出の方の言葉、私が原作を読んだ時に感じたことを大切にしようと思いました。舞台は稽古で何度も何度も演じて作り込んでいくことができますが、映像はそれがないので瞬発力が必要になります。だから、事前に作り込み過ぎて頭が固くならないように、柔軟に対応できるようにしました。あまり作り込まず相手とのお芝居のやりとりに懸ける感じが今回の挑戦でした」

 ──初回の最初のシーンは?
 「父親から虐待を受け、考える力、生きる力をなくしてしまった状態のシーンでした。家定は後に人との出会いによって心を開いて元気になっていきますが、あのシーンはしおれかけの花の状態ですから、とにかく、何も感じない人であるように臨みました。私は舞台でエネルギーを発散するタイプの人間なので、自分から引き算するようなお芝居が難しかったです」

 ──家定の魅力は?
 「彼女はとても賢くて物事を客観視できます。ちゃんと将来を見据えて物事を考えられます。新しい意見をきちんと受け入れる余裕があります。そこが素敵だと思いました。私自身は宝塚でトップに立った時、こうじゃないといけない、こうあるべきだというものに考え方が縛られがちでした。だけど、本当に凄い人はそうじゃなくて、どんな意見でも聞いて良い意見があれば採用します。家定はそれができる人、人の上に立つ素質がある人だと思います」

 ──ご自身とリンクする部分はありますか?
 「ないです。私はそんな聡明じゃないです(笑)とにかく、家定が思うこと、考えることを理解して演じようと思いました」

 ──映像の仕事という点で気をつけたことはありますか?
 「映像は目の動き、表情の変化が如実に表れます。だから、大きな動きをする、見せるというより『存在する』という意識で常にいました。『そこに存在している』という感じです」

 ──現実的に演じるということ?
 「お着物を着て、かつらをつけているのである程度作り込まれています。だから、自分はナチュラルでいないといけない。でも、ナチュラル過ぎると現代っぽくなってしまう。所作は宝塚時代に勉強させていただく機会が多かったのである程度は知っていましたが、普段からそのような所作で生きている人に見えるようにするのはとても難しかったです」

 ──舞台とは全く別の新しい仕事をしている感じですか?
 「舞台は生ものなので、終わった後に自分がお芝居している時の表情を見る機会があまりないんです。だから今回、映像で撮られたものを後で見て自分の表情をチェックするのが不思議でした。新しいことに挑戦させてもらっているなと感じました」

 ──これから役者としてどんな道を歩んでいきたいですか?
 「道を探している途中ですが、このように挑戦させてもらうことでまた気持ちも変わってきます。自分は何が好きで、何にときめくのかということが分かってきます。もっと映像でこういう役をやりたいという思いもありますし、改めて舞台も好きだと思います。昔は、目標がないとダメなんじゃないかと思っていましたが、今は、無理に決めずに、やるだけやってみようという気持ちで行こうと思っています」

 ──宝塚でトップに立って、そこからまたどこかに行くのは大変なことなのでは?
 「確かに、宝塚は小さい頃からの夢だったので、そこで燃え尽きてしまって、次に進むためにエンジンをかけるのは大変でした。でも今、トップだから…という思いは私の中にないです。トップだったとしても外に出れば1人の女優で、トップだったというのは過去のことでしかないし、その世界だけのことでしかありません。トップをやっていたからそれより上に行こうということではなく、常に上には上がいるから1人の役者としてどんどんステップアップできたらいいなという思いでいます」

 ──今はエンジンがかかっている状態なのですね?
 「そうですね。いろいろやらせてもらって『舞台だけじゃない』というところも自分の中ではとても刺激になっています」

 ──宝塚時代からのファンへのメッセージをお願いします。
 「これまで映像をあまりやってこなかったので『大奥』に出ることになって、ファンの方々にとても喜んでいただきました。時間を費やして私の舞台を見てくださるファンの方々は貴重な存在です。その方々に映像という形でも楽しんでいただけるように頑張りました。これからも頑張るので、ぜひ一緒に歩んでください。よろしくお願いします」

 ──最後に、「大奥」をまだ見ていない人たちへのメッセージもお願いします。
 「自分で演じていて『大奥』は今の時代を生きる私たちに前向きなメッセージを残してくれる作品だと感じます。ぜひご覧ください」

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽などを担当。

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