漫画家・石井いさみさん死去 80歳「750ライダー」で新ジャンル、少年チャンピオン黄金期支える

[ 2022年9月25日 05:20 ]

石井いさみさん
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 大型バイクを巡る青春を描いたヒット作「750(ナナハン)ライダー」などで知られる漫画家の石井いさみ(いしい・いさみ、本名勇巳=いさみ)さんが17日、急性心不全のため死去した。80歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。

 高校在学中の1957年に「たけうま兄弟」でデビュー。69年から「週刊少年サンデー」で高校サッカー漫画「くたばれ!!涙くん」を連載。75年から「週刊少年チャンピオン」で「750ライダー」の連載を開始した。同作は大型バイクに魅了された高校生の恋と青春を描いて大ヒット。連載は85年まで続き、コミックスは50巻に達した。

 青春バイク漫画の金字塔として新ジャンルを確立させた「750ライダー」。石井さん自身が高校時代にバイクの魅力に取りつかれた走り屋だった。「ドカベン」や「ブラック・ジャック」を担当した編集者で、チャンピオンの2代目編集長だった壁村耐三氏から「野球漫画を描いてくれ」と頼まれるも断って、バイクの漫画を希望した。

 当時、バイクは仕事で使用するもので、娯楽で乗ることは「悪」のイメージが強く、暴走族の社会問題も大きくなっていた。「働く道具で遊ぶな」と言った読者からの批判的意見も多かったが「逆に読者をあおるようにバイクのシーンを描いた」という。

 連載開始時は人の生死も描く硬派なストーリーだったが、80年代に入ると読者の好みは変化。ラブコメへと内容も変化させた。また、当時のアシスタントの1人が後に「タッチ」などをヒットさせた、あだち充氏(71)。石井さんは「本当に絵がうまかった。最後の方は彼にほとんど描かせたくらい」と明かしていた。

 作家の梶原一騎氏とは少年時代から親交があり、漫画「ケンカの聖書」(71年)でコンビを組んだことも。漫画界に残した功績は計り知れない。

 《70年代後半、発行部数日本一》「750ライダー」は70年代後半の「チャンピオン」黄金期を支えた。同誌は78年末に250万部を刷り、発行部数日本一を記録。当時の連載作品は、野球漫画の金字塔「ドカベン」をはじめ、「ブラック・ジャック」「がきデカ」「マカロニほうれん荘」「らんぽう」「月とスッポン」など人気作が目白押しだった。

 ◇石井 いさみ(いしい・いさみ、本名勇巳=いさみ)1941年(昭16)12月8日生まれ、東京都出身。都立蔵前工業在学中だった57年、16歳で月刊誌「少年クラブ」にデビュー作「たけうま兄弟」を発表した。代表作は番長漫画「のら犬の丘」、サッカー漫画「くたばれ!!涙くん」など。池田大作さん原作の「劇画 人間革命」も手掛けた。

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