羽生九段 タイトル通算100期へ静かな闘志 19日服部四段戦で開幕 王将戦挑戦者決定リーグ

[ 2022年9月19日 05:30 ]

気合十分の羽生善治九段
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは19日、東京都渋谷区の将棋会館で行われる羽生善治九段(51)―服部慎一郎四段(23)戦で始まる。昨期上位のシード棋士4人、予選を勝ち抜いた棋士3人の計7者による総当たり戦の最上位者が藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=への挑戦権を得る、将棋界屈指の過酷なリーグ。開幕戦に臨む羽生、服部の両者に意気込みを聞いた。

 羽生はいつだって平常心の塊だ。挑決リーグの在籍は今期で節目の30に到達。うち12期はタイトルを保持しており、実質は参戦18期目となる。「何期目というのはさすがに正確に覚えてないですが、そこまでの年数になっていたんだなあ、というのが率直な実感」。約2カ月の戦いを前にしても、その肩に過剰な力は入っていない。

 タイトル獲得通算99期。歴史の浅い叡王戦を除く7タイトル全てで永世資格を持つ棋界のレジェンドも、27日が52回目の誕生日。99個目の栄冠・竜王位を18年12月に失ってから3年9カ月。この間の成績はやや精彩を欠き、昨21年度は14勝24敗という信じられない不振に陥った。順位戦もA級から降格した。

 「それまでのやり方、スタイルでは通用しなくなった。少しずつでもモデルチェンジをしなければ」研究方法を含め、過去の成功経験をいったん白紙に戻しての暗中模索。身に染みついた序盤の定跡にこだわらず、勝率の高い若手が好んで指す乱戦系をじっくりと分析した。
 「最近の将棋は茫洋(ぼうよう)としているケースが多い。いろいろな形がばらばらに出現する。なので何となくでも全体像をつかむ必要がある。今はそれに重きを置いて研究しています」

 手をこまぬいているだけでは衰えてしまう頭脳に新鮮な刺激を与え続ける。試行錯誤を絶やさない今期はここまで11勝4敗の好成績。勝率・733は、並み居る新進気鋭棋士に交じっても9位にランクされている。「まだまだ全体像を捉えるのは難しいんですけど」と謙遜するが、ライバルを震え上がらせたかつての力強さは明らかに戻りつつある。

 若手のホープ、服部とのオープニングゲーム。「王将戦は2次予選を抜けるのも大変。そこを勝ち上がったのだから勢いのある若手という印象。自分の持っているものを出し切って戦いたいです」と静かな抱負を明かす。

 タイトル通算100期への第一歩でもある今リーグ。「やるからには挑戦者を目指す。その気持ちは全く変わりありません」。平常心の塊は闘争心の塊でもある。

 ≪チェスクロック方式に≫王将戦の時間計測は今期から予選に限り、秒単位で実測するチェスクロック方式に変更された。挑決リーグの持ち時間は各4時間(1、2次予選は各3時間)。対局時間は60秒未満切り捨てのストップウオッチ方式より1時間程度短くなる傾向がある。来年1月開幕予定の7番勝負(各8時間)は例年通りストップウオッチ方式。

 ◇羽生 善治(はぶ・よしはる)1970年(昭45)9月27日生まれ、埼玉県出身の51歳。85年、史上3人目の中学生棋士に。89年12月、19歳で竜王獲得。通算タイトル99期のほか一般棋戦優勝45回、通算勝利1506勝はいずれも歴代1位。

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