3代目黄門さま・佐野浅夫さん、老衰で死去 96歳 「泣き虫黄門」で人気

[ 2022年7月5日 05:26 ]

TBS「水戸黄門」で水戸光圀を演じた佐野浅夫さん。助さん役・あおい輝彦(左)、格さん役・伊吹吾郎と(C)C.A.L
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 TBSテレビの人気時代劇「水戸黄門」の3代目黄門役で知られる俳優の佐野浅夫(さの・あさお、本名浅雄=あさお)さんが6月28日午後9時59分、老衰のため京都市の自宅で死去した。96歳。横浜市出身。葬儀は家族で行った。「水戸黄門」では、初代、2代目とはひと味違った庶民的で慈悲深いご老公としてお茶の間に親しまれた。

 佐野黄門が静かに旅立った。所属事務所によると、21歳年下の育子夫人にみとられ、苦しむことなく息を引き取った。5月中旬から20日間ほど肺炎で入院。6月上旬に退院し「車椅子に乗り、元気な様子で生活していたが、次第に衰弱が見られた」(関係者)という。

 2008年に54年続けたNHKラジオ「お話でてこい」の朗読担当を降りて以降は事実上の引退状態だった。家族の意向で、お別れの会などは行わない。

 太平洋戦争中の1944年から俳優として活動し、戦後の50年に劇団民芸の結成に参加した。映画では熊井啓監督作品の常連で「帝銀事件・死刑囚」(64年)などに出演。68年スタートのTBSドラマ「肝っ玉かあさん」で頑固なそば店の職人を演じ、評価が高まった。

 脇役を極めていたが、芸歴50年だった93年、67歳で自身初の主役「水戸黄門」に抜てきされ、00年まで水戸光圀を演じた。豪放磊落(らいらく)な初代の故東野英治郎さん、上品な2代目の故西村晃さんとは違う庶民的で優しい「泣き虫黄門」として親しまれた。

 役を掘り下げて研究する真面目な性格。そば店の職人を演じるに当たっては、そばの打ち方を習った。「水戸黄門」では台本から黄門のセリフを抜き出して書き写し、書くことでセリフを完全に暗記。「水戸黄門」を見てくれている世代に感謝を伝えようと、各地の老人ホームも訪問。54年にスタートした「お話でてこい」では半世紀以上、幼児に童話などを語り聞かせた。

 プライベートでは98年に先妻の英子夫人に先立たれ、00年に育子夫人と再婚。育子夫人の実家がある京都に移住した。公の場に出なくなった後も3年ほど前までは「水戸黄門」の撮影が行われていた東映京都撮影所を訪れ、関係者と談笑していた。突然の訃報に日本中に悲しみが広がった。

 佐野 浅夫(さの・あさお)本名浅雄=あさお。1925年(大14)8月13日生まれ、神奈川県出身。1944年に劇団苦楽座に入団。45年公開の「後に続くを信ず」で映画デビュー。映画「きけ、わだつみの声」(50年)、TBS「おやじ山脈」(72年)などで脇役として活躍。NHKラジオ「お話でてこい」では4000回を超える朗読をこなした。96年、勲四等瑞宝章を受章。

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