「鎌倉殿の13人」新垣結衣 八重さん最期に「納得」“私はとっても満足”の解釈は?義時&小栗旬にエール

[ 2022年6月5日 20:45 ]

「鎌倉殿の13人」八重役・新垣結衣インタビュー

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第22話。八重(新垣結衣)の“最期の言葉”が明らかに(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は5日、第22回が放送され、女優の新垣結衣(33)が新境地を開拓した主人公・北条義時の妻・八重の“最期の言葉”が明かされた。毎回のようにツイッターの世界トレンドに入るなど、今作随一の癒やしの存在として大反響を呼び、ドラマ前半を牽引。オンエア終了後、SNS上には前回に続いて悲しみの声が相次ぎ、再び「八重さんロス」が広がった。大河初出演、時代劇も本格初挑戦となった新垣にラストシーンの舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 八重は主人公・義時(小栗)の初恋の人。最初の夫・源頼朝(大泉洋)と父・伊東祐親(浅野和之)の間で板挟みとなったがゆえに最愛の息子・千鶴丸(太田恵晴)を失うなど、次々と悲運に見舞われた。しかし、どんな時も見守り続けてくれたのが幼なじみの義時。第13回(4月3日)のラスト、義時の一途な想いが八重の心を開いた。待ち焦がれた笑顔の「お帰りなさい」に、義時は男泣きした。

 第21回(5月29日)、義村とともに子どもを川遊びに連れていったが、八田知家(市原隼人)から預かった孤児・鶴丸(佐藤遙灯)が川に取り残される。八重は敢然と激流の中に入っていき、鶴丸を救出。義村に引き渡した。しかし、義村が一瞬、目を離した隙に八重の姿がない。必死の捜索も、仁田忠常(ティモンディ・高岸宏行)が政子に無情の報告。義時は伊豆・願成就院におり、鎌倉を留守に。仏師・運慶(相島一之)が彫った阿弥陀如来像を見上げ「ふと、妻の顔を思い出してしまいました。息子の寝顔を見ている時の」――。

 序盤、夫・江間次郎(芹澤興人)に「舟を出しなさい」と命じる(第5回、2月6日)など、頼朝を想うがゆえの行動は表面的にはわがままにも映った八重だが、その奥にあったのは芯の強さ。時代に翻弄され、傷つきながらも意志を貫く気高さを体現し、定評のあるコメディエンヌぶりから一層、幅を広げる新境地を開拓した。

 結婚後は笑顔が増え、義時にとっても視聴者にとっても不可欠な癒やしの存在となった。

 そして、この日の第22回。義時は「天罰だ」と自分を責め、八重の“最期の言葉”を義村に尋ねた。

 義村「そういえば、今思うと八重さん、あの日、気になることを」

(回想)

 八重「私は、ちっとも悔やんでいません。十分楽しかったし、私はとっても満足」

 義時「八重がそう言ったのだな」

 義村「あの日は肌寒く、川遊びは思うようにはできなかったが、子どもたちは楽しそうだった。八重さんが言ったのは、そのことかもしれないし…」

 義時「そうではないと思いたい」

 八重は頼朝との仲を裂かれて入水したという言い伝えもある“悲運の美女”。八重の最期について、新垣は「この作品の八重さんの生き方を見てきて、ひとまず言い伝えのようなことはないと思っていましたが、それ以外、彼女の最期は全然想像がつきませんでした。台本が上がってきて、八重さんの最期を知った時は『なるほど』って思いました」と率直な心境を明かした。

 「大事な千鶴丸が亡くなって心に負った傷が、義時さんと一緒に過ごし、金剛も生まれ、そして子どもたちを助けていくことで癒えたような、あいた穴が埋まったような気がしていましたが、鶴丸が川に流されそうになって岩にしがみついているのを見た瞬間、鶴丸と千鶴丸の姿が重なって、千鶴丸が生きていた時代にタイムスリップしてしまったような、あっという間にそこに引き戻されるような感覚がありました。結果的に見れば、義時さんや金剛、今を一緒に生きている人たちに対しては申し訳ない気持ちで、悔いが残ると思うんですけど、やっぱり何ものにも代えられないものがある。こういう時に八重さんがこういう行動を取ってしまうことに関しては、とても納得していました」

 ロケを行った川は「想像していたよりも大きかったですし、流れも速かったです。なので、怖かったですが、鶴丸が岩にしがみついていると思うと、早く助けたいと思いました。もちろんスタッフの皆さんがサポートしてくれて、撮影は安全だったんですけど、鶴丸もガクガク震えていたので、本当に守らなければと思いましたし、どんどん冷えていく身体を抱いていると、お芝居とはいえ気持ちが焦りましたね。やり甲斐のあるシーンでした」と振り返った。

 義村が回想し、義時に伝えた八重の言葉「私は、ちっとも悔やんでいません。十分楽しかったし、私はとっても満足」。新垣はどう解釈したのか。子どもたちが楽しく遊んだあの日に対してか、自分の人生に対してか。

 「私もどっちなんだろうなと最初は悩みました。受け取り方は視聴者の皆さんそれぞれですけど、私自身としては“人生に対して”ではなく“目の前の状況に対して”という気持ち。自分の最期を予感しているとか、今、何があっても思い残すことはないとか、そういう意味ではないと思いながら演じています。まだまだ子どもたちを救いたいと強く思っていたはずですし、まだ金剛も小さかったですし、やっと義時さんのおかげで以前に比べると格段に幸せな日々を送れるようになったので。子どもたちは八重さんの生き甲斐の1つ。それがある限り、自ら思い残したことはないなんて言わないんじゃないかなと思ったので。ただ、過去に引き戻されてしまった瞬間からは、もはや正気ではなく“今”のことは頭になかったのではないかなと思います。あの時の千鶴丸を救うような気持ちで、とにかく必死に川に飛び込んで、助けることができて、ただただ心からホッとして力が抜けてしまったという感じなのかなと」

 最後に、八重として義時に、新垣として小栗にメッセージをお願いした。

 第17回、武田信義(八嶋智人)の息子・一条忠頼(前原滉)、義高の首を取った藤内光澄(長尾卓磨)を討った後、義時は涙し、思い詰めた表情。「それは葛藤しているからで、まだ昔と変わらない義時さんが残っている証しだと思うんです。八重さんの前にいる彼は昔と変わらなかったので、彼女のことを思い出す時には純粋だった頃の姿を呼び戻せたらいいなと。これから抱えるものも変わって、本人も変わっていかないといけないですけど、八重さんと一緒に過ごした時間があることで、真っすぐだった頃を忘れずにいてくれたらいいなと思います」

 「新垣結衣としては、オールアップの時、小栗さんから最後まで見てくださいと言われたので(笑)、もちろん最後まで(笑)空の上から見守らせていただきますとごあいさつをしました。なので、本当に最後まで、どうか健康にお気をつけて、無事に完走されますように祈っていますという思いです」

 第21回の副題の如く、まさに“仏の眼差し”だった。

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