「カムカム」夏祭りプロポーズ場面 川栄李奈の芝居の奥行き

[ 2022年3月3日 08:15 ]

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第86回で、五十嵐文四郎(本郷奏多)からプロポーズされたひなた(川栄李奈)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】3日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第86回で、ヒロインのひなた(川栄李奈)が大部屋俳優の五十嵐文四郎(本郷奏多)のプロポーズを受ける場面があった。

 演出の石川慎一郎氏は「今週は、ひなたと五十嵐の恋愛が成就するところが見どころなので、ラブストーリーをしっかり描きたいと思った。本読みの段階で、2人は出会うべくして出会い、付き合うべくして付き合うという運命の糸的なものを感じていた。これまで、川栄さんと本郷さんは想像以上の演技を見せてくれていたので、それを忠実に撮っていくことを心掛けた」と話す。

 ひなたがプロポーズされるのは、夏祭りの場面。このドラマでは過去に、初代ヒロインの安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)、2代目ヒロインのるい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)がそれぞれ夏祭りに出掛ける場面があり、3世代にわたって踏襲される形となった。

 石川氏は「最初から助監督としてこのドラマに携わってきたが、夏祭りの場面に関しては、安子の時、るいの時をあまり意識せずに撮った。ひなたが五十嵐と一緒に映画を見に行って、普通の女の子が普通に恋をして、夏祭りで浴衣を着て、ついに恋が成就するという流れを、どう盛り上げて行けるかということだけを考えて演出した。安子の時、るいの時とのつながりは、見て感じ取っていただければ」と語る。

 五十嵐のプロポーズの言葉は「そなたを幸せにしたい。ついて来てくれるか?」。かつて条映のコンテストの演技審査で、ひなたに対して言ったセリフと同じだ。コンテストで、ひなたに「誰がおまえなんかについていくかあ!」と刀で切られたことを受け、プロポーズの際には、最後に「今度は切るなよ」と冗談を飛ばした。

 石川氏は「2人は、これまで、おかしな会話のやりとりが特徴的だったので、あの場面も、甘くなりすぎないように意識した。恋愛関係でも、最後は冗談に落ち着くという空気感が、現場で芝居を見ていて面白いと思った」と話す。

 プロポーズされたひなたは幸せそうな表情を浮かべ、五十嵐に抱きつく。

 「あの場面は、かわいらしい。現場で芝居を見て、ひなたも普通の女の子なんだと感じた。時代劇が好きな女の子で、一見、男の子っぽく、ずばずば物を言うが、好きな人の前では甘い雰囲気になる。ひなたも女の子から女性になっていくんだと感じながら撮った」と語る。

 それは、女優・川栄李奈の芝居の奥行きを感じさせる場面でもあった。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年3月3日のニュース