「鎌倉殿の13人」光る脇役“発掘力”不憫・江間次郎役の芹澤興人&巨漢・工藤茂光役の米本学仁が説得力

[ 2022年2月13日 06:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で八重の夫・江間次郎役を好演している芹澤興人(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は主要キャラクターはもちろん、脇役も実に魅力的だ。八重(新垣結衣)の“不憫(ふびん)な夫”江間次郎役に俳優の芹澤興人(41)、恰幅(かっぷく)の良い武士・工藤茂光(もちみつ)役に米ハリウッドからの“逆輸入俳優”米本学仁(たかと=42)と新鮮なキャスティング。ともに唯一無二の存在感を発揮し、SNS上で反響を呼んだ。ドラマを豊かに彩る制作サイドの“発掘力”が光る。

 <※以下、ネタバレ有>

 ヒットメーカーの三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 江間次郎は、流罪人・源頼朝(大泉洋)の監視役だった伊豆の実力者・伊東祐親(浅野和之)の家人。狩野川を挟んだ北条家の対岸、江間が本拠。祐親の娘・八重は頼朝と引き離され、江間に嫁ぎ、粗末な館に暮らしている。

 演じる芹澤は09年、主演映画「最低」(監督今泉力哉)で「第10回TAMA NEW WAVEコンペティション」ベスト男優賞を受賞。数々の映画やドラマで活躍してきたバイプレーヤー。大河ドラマには17年「おんな城主 直虎」などに出演している。

 第3話(1月23日)、江間との身分の差もあり、八重は「夫と思ったことはございません」と父に告白。第4話(1月30日)、江間から三島明神の祭りに誘われると「あなたと?」と冷ややか。江間は思わず自虐の苦笑を浮かべた。そして、江間との会話の中から、八重は愛する頼朝の挙兵の最重要ポイント、伊豆国の目代・山木兼隆(木原勝利)が館にいるかどうかを聞き出す。江間によると、山木は前日に落馬し、足を痛めたため館にいるという。八重は頼朝との逢引の合図だった白い布をくくり付けた矢を対岸の北条館へ放ち、察知した頼朝と義時はこの夜の出陣を決めた。

 第5話(2月6日)、八重は伊東館に移るように、という父の指示を江間から伝えられると「私はここにいます。戦が始まるのですね?勝てますか?勝ってもらわねば、困りますよ。北条は強いですよ」。江間は「北条らが大庭勢と戦っている間に、我が伊東勢が背後を攻め、挟み撃ちに。勝ちます」と作戦を明かしてしまう。

 八重は舟着き場に急ぎ「舟を出しなさい。佐殿(頼朝)にお伝えしなければ。舟を出しなさい。佐殿をお助けするのです。早くしなさい。いいから早く」と江間に命令。江間は「何故。できませぬ。私は、あなたの夫だ。侮るな!」と叫んだが、舟を出さざるを得なかった。八重は「ひどい女だということは分かっています。いくらでも憎みなさい」。すすり泣きしながら舟を漕ぐ江間だった。

 愛する頼朝のために動く八重に、またもや手を貸す結果になった江間。SNS上には「江間殿、お気の毒すぎるな…何という役回り」「監視役とはいえ、つらいねぇ」「江間次郎に感情移入してしまう」「いい加減、今の夫にも心を開いてよ、八重さん」「当時の格差婚、普通に残酷だな…」などと同情の声が相次いだ。

 出番こそ多くないものの、それだけ芹澤が江間の悲しみ、報われなさを見事に体現。その声も“イケボ”と話題を集めた。

 工藤茂光は、恰幅の良い伊豆在郷武士。北条家とは本拠が近所とあり、仲が良い。室町時代から明治に至る日本絵画史上最大の画派「狩野派」は茂光の子孫。

 演じる米本は身長1メートル80&体重180キロの体躯の持ち主。07年、映画プロデューサーを志して渡米。演技経験もないまま、忠臣蔵をモチーフとした13年公開の米映画「47RONIN」でハリウッドデビューを果たした。米国を拠点に、数多くの映画・ドラマ・CMなどで活躍。19年、フジテレビ「コンフィデンスマンJP 運勢編」、Netflix「全裸監督」「愛なき森で叫べ」と日本作品にも出演し始め、20年夏に行われた映画「総理の夫」(21年9月公開)の撮影を機に、日本に拠点を移し、今回、大河デビューが舞い込んだ。

 制作統括の清水拓哉チーフ・プロデューサーによると、鎌倉時代成立の軍記物語「源平盛衰記」にも「工藤茂光は太っていて、戦で難儀した」という記述があり「とことん大柄な人にお願いしたいと考えていたところ、プロデューサーチームの中から米本さんを推す声が上がりました。実際にお会いしてみると、圧倒されるぐらい本当に大きい方。これは、相当なインパクトになると直感しました。お芝居も表現力豊かで素晴らしいので、実にいい方に巡り会えたと思います」と起用理由を明かし、称賛した。

 初登場は第3話、北条宗時(片岡愛之助)三浦義村(山本耕史)らが馬に乗って狩りから北条館に戻るシーン。米本の乗れる馬がなく、先に到着して馬から下りている演技になった。衣装合わせの際、米本の着れる大きさの着物もなかったほど。2着の着物を左右から半分ずつ羽織り、茂光のキャラクターに合う色味や柄を決めていった。米本は「衣装さんにも、ご苦労をお掛けしました」と頭をかいたが、それだけ物語の説得力は増した。

 第5話、石橋山の戦いに敗れた頼朝たちは、山中の洞窟に身を潜めた。茂光は「鎧が体に合わん。いったん戻って(鎧を)取り替えてくる」。頼朝の観音像を取りに北条館へ戻ることになった宗時に同行。北条館まで、あと少しの川辺。いったん宗時と別れた矢先、祐親の下人・善児(梶原善)に討たれた。

 芹澤も米本も今作を機に、さらにオファーが増えそうなインパクトを残した。

 今後登場の弁慶役には元ラガーマンの俳優・佳久創(かく・そう、31)、頼朝の異母弟・義円役には舞台を中心に活躍中の実力派俳優・成河(そんは、40)を起用。ともに大河ドラマ初出演。またも反響を呼ぶキャスティングとなりそうだ。

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