藤井3冠 67手で“因縁の相手”広瀬八段を圧倒、開幕連勝に「いいスタート」

[ 2021年10月5日 05:30 ]

感想戦で笑顔の藤井3冠(撮影・西海 健太郎)
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 将棋の第71期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは4日、東京都渋谷区の将棋会館で1局を行い、先手の藤井聡太3冠(19)=王位、叡王、棋聖=が67手で広瀬章人八段(34)に勝ち、開幕2連勝を飾った。広瀬は1勝1敗。5日は同所で羽生善治九段(51)―近藤誠也七段(25)戦が予定されている。 藤井VS広瀬指し手

 67手での決着。持ち時間(各4時間)を53分残してのリーグ2勝目。「どういう展開になるか分からなかった」「あまり成算はなかったです」――。例のごとく小声で対局を精査する藤井は伏し目がちだ。敗者のような受け答えなのに、残された棋譜は快勝の部類に入る。このギャップもファンを魅了してやまないチャームポイントだ。

 戦型は一切迷わず相掛かりを選んだ。実は直近の広瀬戦(2月18日=竜王戦、4月9日=叡王戦)でも先手番で相掛かり。最新のディープラーニング系ソフトを導入して研究を深める藤井にとって、得意分野になりつつあるこの作戦を採用したのは、ある意味当然だ。両者想定内で進行して迎えた33手目の▲7五歩。「やってみようかなと思っていました」。周到な研究手を投入して広瀬を1時間5分の大長考に引きずり込む。

 その後はほぼ前掛かり。35手目に打ち込んだ▲5六角は「こちらの王も結構キズが多いので」と懐疑的だったものの、その角を切ってからは47手目▲7三銀と放って左辺の攻めの橋頭堡(ほ)を築く。59手目の▲2三飛成で挟撃態勢を完成させ「指しやすくなったのかなと思いました」と、勝利への感触をつかみ取った。

 この日の対局前までは対広瀬4勝1敗と相性の良い星取りだが、唯一の敗戦が2期前の第69期挑決リーグ最終局だった。4勝1敗同士で勝った方が挑戦というしびれる状況で悪夢の逆転負け。続く昨期は3勝3敗で並びながら、前期ランキングの差でリーグ陥落を余儀なくされた。

 そんな因縁の相手に快勝しての連勝発進。昨期の3連敗スタートとは天と地ほどの違いがある。年内4冠を目指す竜王戦7番勝負(8日開幕=対豊島将之竜王)を直前に控えながらも、好調はしっかり維持した。「(挑決リーグは)いいスタートを切れたと思う。挑戦を目指して頑張りたい」と短く結んだ藤井。目の前にある階段を一歩一歩、着実に上っている。

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