1作目から7年…帰ってきた「半沢直樹」 目指したのは“令和の用心棒”だった

[ 2020年12月21日 09:30 ]

激動2020 芸能編(5)

前回同様に大ヒットした堺雅人主演のドラマ「半沢直樹」
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 7月期にTBSで放送され、最終回で平均世帯視聴率32・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したドラマ「半沢直樹」。1作目から7年後に帰ってきた新作は「倍返し」に飢えたファンをとりこにした。前作から監督を務めるTBSドラマディレクターの福澤克雄氏(56)が目指したのは“令和の用心棒”だった。

 現代の民放ドラマでは視聴率20%が高い壁となっているが、初回から22・0%を記録。毎回のように「顔芸」「恩返し」などさまざまな話題も飛び出した。関連ワードはSNS世界トレンドで1位になるなど、誰もが認めるヒット作となった。

 福澤氏が念頭に置いていたのは「テンポの速さと興味の持続」だ。「僕はいつもそこに気を付けている。飽きさせないように次から次へと話が進んでいくこと。ダラダラと話が進まない作品が多いでしょ。昔の日本映画を見てください。パッパッと進みますから」。

 理想は1961年に公開された巨匠黒澤明監督の「用心棒」だ。三船敏郎さん主演の痛快な娯楽映画。浪人が用心棒として雇われたふりをして、縄張り争いをするヤクザ同士を衝突させる物語だ。「用心棒があっちついたり、こっちついたりパッパッと展開して、最後は“あばよ”って去って行く。客に何も考えさせないで、面白く見せて、終わり。あれを目指したいとずっと思ってきた。昔の映画は表情も豊かで、出てきた瞬間にこれは味方、これは敵と分かりやすい。余計な説明がいらないんです」

 半沢の1話の台本は約100ページ。通常の1時間の連ドラの1話の台本は70ページ前後で、ほぼ同じ時間内に収めることを考えれば、半沢がスピーディーに進んでいたことが分かる。

 速さの実現には主演の堺雅人(47)の早口が欠かせなかった。「あれは特殊能力。何十ページのセリフを一度も間違えずに何回もしゃべれる。あの速さと的確さが作品の根元ですね。堺さんが真ん中にドーンと存在してるから、周りが“詫(わ)びろ、詫びろ!”とかやっても成り立つんですよ(笑い)」

 そのテンポの良さに加え、視聴者目線を忘れることなく、妥協しない面白さの追求が行われた。台本が現場でバンバン変わる。監督が変えることもあれば、役者のアドリブもあった。

 「市川猿之助さんの“詫びろ、詫びろ!”って言うのは、いきなりやるからビックリした。でも、あれだけ声を張って何回も詫びろって言えるのは凄いですよ」。もちろん、すぐにOK。監督も役者も「面白くしたい」という思いで一致しているからこそ、こうした名演技が生まれた。「顔芸」と呼ばれた表情の演技も視聴者の興味を引く、監督が求めた分かりやすさが生み出したものだった。前作は最終回で42・2%を記録し、平成ドラマでNo・1。今作も令和ドラマで最高の数字をマークした。

 福澤氏は今後もTBSの注目作を担っていく立場。「僕がやるからには絶対に面白いものにしますよ」

 今回の半沢の成功で面白さの徹底追求に自信を一層深めたのか、キッパリと言い切った。今後の福澤作品からも目が離せない。=終わり=

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