「エール」最終回にロス広がる コロナ禍乗り越え、斬新な試み連発“攻め続けた朝ドラ”ネット感謝の声続々

[ 2020年11月27日 08:15 ]

連続テレビ小説「エール」最終回。コンサートの締めは裕一(窪田正孝・左端)が指揮を執った「長崎の鐘」。出演者全員が平和への祈りを込めて歌い上げた(C)NHK
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 俳優の窪田正孝(32)が主演を務めたNHK連続テレビ小説「エール」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は27日、最終回(第120話)を迎え、前代未聞のコンサートで完結した。コロナ禍の列島にエールを送り続けたドラマの終幕に、インターネット上には放送終了を惜しむ声や感謝の声が相次ぎ「エールロス」が広がった。コロナ禍による2カ月半の撮影休止など逆境の連続を乗り越え、原始時代から始まる初回から最終回まで、既成の枠にとらわれない型破りな作風を貫徹。斬新な試みを連発し“攻め続けた朝ドラ”として刻まれた。

 朝ドラ通算102作目。男性主演は2014年後期「マッサン」の玉山鉄二(40)以来、約6年ぶり。モデルは「栄冠は君に輝く」などで知られ、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏(1909―1989)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏。昭和という激動の時代を舞台に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田)と妻・音(二階堂ふみ)の夫婦愛を描いた。

 最終回は、窪田が司会を務める「『エール』コンサート」と題した特別編。劇中登場してきた古関さんの名曲の数々から、オールキャストが「長崎の鐘」など全9曲を熱唱した。10月22日、東京・渋谷のNHKホールで収録。本編のドラマパートは一切なく、全編15分コンサートは朝ドラ最終回史上初とみられる極めて異例のフィナーレ。音楽の力を描き、本職のミュージカル俳優を多数起用した今作ならではの企画となった。

 SNS上には「来週からエールロスやん」「感動で涙が止まりませんでした。岩城さんの声量半端ないし、直太朗さんの優しい声。薬師丸さんの透き通るような声。感動が止まりません」「感動の拍手、そして号泣。いつか観客を入れて、本格的なコンサートにしてほしい」「『エール』コンサートで終わって、ホント色んな意味で前代未聞な朝ドラだったな…戦争の描写や演出もセンスがあって独特だったし」「希望を失いつつあった時、『エール』を見てきて良かった。素敵な作品、演出、ありがとうございました」などの書き込みが続出した。

 朝ドラ史上、前代未聞の逆境が続いた。

 昨年9月17日のクランクインから撮影が進む中、NHK「ハゲタカ」、フジテレビ「医龍」「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―」シリーズ、テレビ朝日「アイムホーム」などの話題作・ヒット作を手掛けた脚本家・林宏司氏が途中降板したことが同11月に判明。NHKは異例の交代劇の理由について「制作上の都合」とし、詳細を明らかにしなかった。後任は清水友佳子氏、嶋田うれ葉氏。チーフ演出の吉田照幸監督(50)も執筆に加わった。

 3月30日朝には、初回放送終了から約1時間半後、悲報が舞い込んだ。コメディアンの志村けんさん(享年70)が29日に新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなった。志村さんは朝ドラはもちろん、最初で最後のドラマ出演。裕一が幼き頃から憧れ続けたものの、大きな壁として立ちはだかった日本作曲界の重鎮・小山田耕三役を演じ、初登場の第25話(5月1日)から第79話(10月1日)まで10回登場した。生前、撮影時に語った「いつもの志村けんらしくない、こんなこともやりますよってところを見てもらえれば、うれしいね」のコメント通り、笑いを封印した重厚な演技。毎回、短い出番ながら圧倒的な存在感を放ち、話題を呼び続けた。

 実質的な最終回となった第119話(11月26日)、未公開の初出し映像で再登場。共演者のNGに思わず笑った鏡越しのオフショットが偶然、撮れていた。いつもしかめ面だった志村さんが最後の最後に柔和な笑顔を披露した。

 そして、新型コロナウイルス。収録は4月1日からストップし、6月16日に2カ月半ぶりに再開。放送は6月29日から中断し、9月14日に2カ月半ぶりに再開。休止中は初回~第65話を再放送。“2周目”の「エール」は“特別版”として、キャストが解説放送(副音声)を行う朝ドラ異例の試みを実施した。

 放送再開前、取材に応じた土屋勝裕チーフプロデューサーは「マスクを外して、メイクを直して、本番」など、コロナ対策をしながらの撮影は時間がかかり「通常の収録ペースの2割ぐらいダウン」。テイク数(本番の回数)も減らしているが、従来のペースの収録は難しいと明かした。結果、放送日程を見直し。当初の「全130回(26週)、最終回9月26日」から10話減の「全120回(24週)、最終回11月28日(本編の最終回は11月27日)」に変更となった。

 窪田も「やっぱり新型コロナウイルスの影響で撮影の流れが止まったこと、そしてスタジオにこもりっきりになるほど撮影が続いたことは正直つらかったです。だから、ロケがとにかく楽しくて(笑)」と率直な心境も吐露した。

 そんな逆境をはねのけ、第6弾まで制作・放送されたコント番組「となりのシムラ」などで志村さんとタッグを組み、「サラリーマンNEO」「あまちゃん」などを手掛けた吉田監督を中心に、画期的な描写を連発した。

 初回冒頭のプロローグは朝ドラ史上最古(?)の紀元前1万年から始まり、窪田と二階堂が“原始人”に。朝ドラ史に残るオープニングは視聴者のド肝を抜いた。

 第23話(4月29日)はほぼ全編15分、窪田、二階堂、唐沢寿明(57)薬師丸ひろ子(56)による4人芝居。裕一と音の結婚をめぐる“コント回”となった。第116話(11月23日)は窪田、二階堂、古川琴音(24)宮沢氷魚(26)と次世代による“コント回”を再現した。

 インパール作戦など戦争を生々しく描いた第18週「戦場の歌」(第86話~第90話、10月12~16日)は“朝ドラの域を超えた戦場描写”と大反響。10月24日深夜には異例の一挙再放送となった。

 第90話は音の母・関内光子役を好演した薬師丸が敗戦からの復活の思いを込め、讃美歌496番「うるわしの白百合」を披露。3分間の“魂の歌声”は視聴者の胸を打った。同じ第90話の後半には、ラジオドラマの企画「鐘の鳴る丘」をめぐる劇作家・池田(北村有起哉)とプロデューサー・初田(持田将史)のやり取りの中に「ウソじゃないな?」「NHKですよ。ウソはつきません」「NHKだもんね」という異色の台詞が飛び出した。第88話からは4話連続してタイトルバック映像(主題歌とタイトルの題字や出演者・スタッフのクレジット)&「GReeeeN」による主題歌「星影のエール」がない朝ドラ異例の演出もあった。

 第18週について、吉田監督は「覚悟を持ってやりましたが、朝に見ていただく、朝の食卓に届けるドラマなので、戦場をどこまで描くかについては躊躇(ちゅうちょ)や迷いもありました。ただ、古山裕一の人生において、戦争からは逃げられない。『NHKですよ。ウソはつきません』という台詞には『物語にウソはつけない』『そこまで(生々しい戦場シーンなどを)やるということは、ウソはつけない』『自分の心にウソをつかず、このドラマを作っています』という僕の正直な気持ちが入っています。きれいに言えば」と思いを明かした。

 終盤、残り3週となってからも泉澤祐希(27)志田未来(27)宮沢ら新キャストを投入。裕一の盟友・村野鉄男(中村蒼)の生き別れた弟、裕一の弟・浩二(佐久本宝)の結婚、裕一の娘・華(古川)の結婚、初回の藤堂先生(森山直太朗)の墓参り、裕一への小山田先生の手紙など、怒涛の展開で伏線を回収。最終回のコンサートまで一気に駆け抜けた。

 吉田監督は「得てして、長いと終盤、何となく引き伸ばしていると感じられることは起こり得て、僕は天の邪鬼なので、今回はラストにかけて加速していくことが命題でした。確かに、もっとゆっくり描いてほしいという意見はあると思いますが、それは他でいくらでもやっていることなので、『エール』でその必要はないと思いました。最終回の最後、窪田さんに『古関裕而さん、たくさんの素敵な曲を本当にありがとうございました』とおっしゃっていただきましたが、収録当日に思い付いて、急きょお願いしました。最終回をどうしてもコンサートにしたかった理由が見つかった瞬間でした。言ってしまえば、『エール』は行き当りばったりで現場でモノを作っているという、ある種、ラジオドラマ『君の名は』じゃないですが、そういう古き良きテレビの作り方をしていたのかなと思います。『エール』というタイトルだったこと自体に、自分たちは視聴者の皆さんに何かを送らなきゃといけないという運命的な役割を感じました。ただ頑張れということじゃなく、思いも寄らない不幸な出来事や悲惨なことも含めて描かなきゃいけないという気持ちは芽生えました。ある意味、こういう危機の時にこそ、思い切りやることが大事だと思います。最終回のコンサートにしても、戦争の描写や終盤の新しいキャラも、プロデューサーは普通、OKしないですよね。どんどんチャレンジしていこうという雰囲気がチーム全体にありました」と振り返り、総括した。

 放送休止前は連日大台20%超だった視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区、世帯)は中断が響き、再開後は18~19%に微減。第114話(11月19日)から5話連続大台超えと盛り返している。

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