金曜夜8時プロレス生中継(上) 視聴者は歴史の目撃者となった

[ 2020年7月8日 13:00 ]

金曜夜8時の生中継を実現したBS朝日「ワールドプロレスリングリターンズ」のロゴ(C)BS朝日
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 【牧 元一の孤人焦点】ちょっとした衝撃を受けた。34年ぶりに金曜夜8時のプロレス生中継が実現した7月3日のBS朝日「ワールドプロレスリングリターンズ」だ。

 多くの人がテレビを見るゴールデンタイム。本来ならば視覚的に盛り上がる映像が目に飛び込んでくるはずだ。ところが、まず画面に映し出されたのは、無観客で、静まりかえった会場。番組冒頭から、常識と現実のギャップの大きさが浮き彫りになった。

 これで良いのか?しかし、すぐに、思い直した。これこそが生中継だ!録画だったら、この冒頭の会場の映像はカットされていたかもしれない。けれど、カットすればコロナ禍のさなかの現実を切り取ってしまうことになる。無観客で、静まりかえった会場。それが現実であり、それをそのまま映し出すのが生中継だ。

 出場した選手たちも難しい試合を強いられたと思う。プロレスほど観客との関係が濃密なジャンルはないからだ。プロレスラーは直線的に勝利に向かうのではなく、見ている人たちをどれだけ盛り上げられるかを意識して戦っている。観客がいなければ、その判断基準もない。

 印象的だったのは高橋ヒロムが入場の際にテレビカメラに向かって「楽しんでくれていますか?これからすごいことが起きますよ」とアピールした場面だ。レスラーが試合前、わざわざ視聴者にメッセージを送るのは珍しい。それは無観客のため、映像を見ている人たちだけを意識して戦わざる得ない、厳しい状況の表れだったと言える。

 どんな技を繰り出そうとも無反応。会場には実況と解説の声だけが響き渡る。それは本来のプロレスとは別物だ。34年ぶりの金曜夜8時の生中継で、視聴者は希少なプロレスを見たことになる。ちょっと大げさに言えば、プロレス史に残る貴重な生中継の目撃者となった。

 高橋とオカダ・カズチカの試合は放送時間内に終わらず、結果は次の番組の中でテロップで伝えられた。生中継のリスクが具現化してしまった形だ。ファンは当然、放送時間を延長して最後まで生中継することを望んでおり、その点は今後の課題だろう。

 いずれにせよ、これでプロレスに新たな道が開かれた。次の一歩に期待する。(つづく)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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