大河「麒麟がくる」 佐々木蔵之介、門脇麦、岡村隆史の珍場面のワケ

[ 2020年4月20日 15:13 ]

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の19日放送で顔を合わせた(左から)藤吉郎(佐々木蔵之介)、菊丸(岡村隆史)、駒(門脇麦)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】そんなわけないだろう!とツッコミを入れそうになったが、いやいや、これがドラマの醍醐味(だいごみ)だと思い直した。ドラマはノンフィクションではなく、エンターテインメントなのだ。

 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の19日放送の一場面。のちの豊臣秀吉の藤吉郎(佐々木蔵之介)、医者の助手の駒(門脇麦)、農民の菊丸(岡村隆史)の3人が顔を合わせた。

 このような場面は歴史に存在しない。そもそも、駒と菊丸は架空の人物だ。制作統括の落合将チーフ・プロデューサーは「『駒を通じて秀吉を書く』というのが脚本の池端俊策さんのアイデアで、そこに菊丸をからめたのは池端さんの遊び心だと思う」と説明。その上で「緊張感のある政治劇が続くドラマなので、彼らのパートは意図的にライトタッチに仕上げており、ほっと一息ついて見られると思う」と話した。

 確かに、あの場面は笑えた。藤吉郎の顔のけがに、駒が親切に薬を塗ると、嫉妬した菊丸がぶぜんとした表情で藤吉郎の傷口に手を伸ばす。その時、なぜか、猿の鳴き声のような効果音が響き渡る。一瞬、なんだ!?と思ったが、考えてみれば、菊丸を演じる岡村には「猿」のイメージがあり、佐々木扮(ふん)する藤吉郎は織田信長から「猿」と呼ばれていた。つまり、あれは、猿が猿をひっかくという構図なのだろう。

 落合氏は、駒や菊丸のような、大河における架空の人物について「われわれ庶民の分身で、武家ばかり出てくる中に『現代人』の目線を持ち込むことができる。時代劇に全く興味のない人も、駒たちを通じて『時代』を追体験できる。この作品の構成的には欠かせない潤滑油的存在と言える」と指摘する。

 もちろん、大河を盛り上げるためには、実在の人物が重要だ。今作は長谷川博己が明智光秀、本木雅弘が斎藤道三、染谷将太が織田信長、風間俊介が徳川家康、などと多彩な顔ぶれが並ぶ。そして、佐々木蔵之介が秀吉。これまで数多くの俳優が秀吉を演じてきたが、染谷の信長と同様に意外性を感じさせるキャスティングだ。

 落合氏は、佐々木の起用について「池端さんの希望もあり、長谷川さんの光秀と拮抗(きっこう)できるような敵対者として描きたいということで、くせもの感を自由自在に引き出せる蔵之介さんにお願いした。このドラマは俳優の実年齢をあまり気にせず、キャラクター押しでキャストを決めていて、それが今のところ、うまくいっていると思う」と手応えを強調した。

 佐々木は今後、どんな演技を見せてくれるのか。染谷の信長と、どんな化学反応を起こすのかも楽しみだ。そして、果たして藤吉郎と駒と菊丸は三角関係に発展していくのか。実在の人物と架空の人物が織り成すハーモニー。それも大河の魅力の一つだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。

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