「コタキ兄弟と四苦八苦」は“日本のブラピ”古舘寛治の“革命”濱谷晃一プロデューサーが明かす“凄さ”

[ 2020年2月7日 11:00 ]

滝藤賢一とダブル主演を務める古舘寛治(C)「コタキ兄弟と四苦八苦」製作委員会
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 俳優の古舘寛治(51)が滝藤賢一(43)とダブル主演を務めるテレビ東京のドラマ24「コタキ兄弟と四苦八苦」(金曜深夜0・12)は、通常のドラマとは異なる作り方をしている。その中心を担っているのが古舘で、滝藤と今作の企画から立ち上げ。20代の頃にニューヨークで学んだ演技メソッドを自分流にアレンジした“古舘メソッド”をキャスト・スタッフと共有した。撮影の数カ月前にはホワイトボードまで使い、熱心な講義を行ったほど。古舘の何が凄いのか、テレビ東京の濱谷晃一プロデューサーに聞いた。

 TBS「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」、日本テレビ「獣になれない私たち」などの野木亜紀子氏によるオリジナル脚本で、映画「天然コケッコー」「苦役列車」、テレビ東京「山田孝之の東京都北区赤羽」などの山下敦弘監督(43)が全話演出を務める。ドラマ通も唸る座組で、深夜ドラマながら反響を呼んでいる。「Yahoo!テレビ」の星取りは平均4・34点(5点満点)、5点が71%と高評価だ(7日午前9時現在)。

 ムラタ(宮藤官九郎)という男と出会ったことから、1時間1000円の“レンタルおやじ”に挑む愛すべきダメおやじ2人、兄・一路(いちろう、古舘)と弟 ・二路(じろう、滝藤)を通して紡ぐ人間讃歌コメディー。一路が足繁く通う「喫茶シャバダバ」の看板娘・さっちゃんを芳根京子(22)が演じる。

 古舘と滝藤は2010年公開の映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」(監督東陽一)で意気投合。17年頭に久しぶりに再会し「何か一緒にやれたらいいね」と企画を練り始めた。

 数々の異色ドラマを送り出してきたテレ東だが、2人の企画に濱谷氏も当初は「うーん、その企画、通るかなー」と苦笑い。ただ「これを通せるのはテレ東くらいしかない!そんなプロデューサーは僕だけだ!という闘志が湧きました」と振り返る。

 「お二人が『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』(17年1月期)にゲスト出演した直後に連絡を頂いたのですが、『バイプレイヤーズみたいに、僕ら俳優発でドラマを作りたい!』という心意気もうれしかったですし、脚本家の野木亜紀子さんならきっと面白くしてくれるはず!という期待もありました。それから、すぐに打ち合わせをして、野木さんから上がってきたプロットの仮タイトル が 『イサキになりたいスズキさん』。それを読んで、これは面白くなる!と確信しました。ほぼ、そのまま第1話として放送されましたね」

 今回のスローガンは古舘の演技メソッドを「日本のドラマで実践する!」。濱谷氏は「僕はその環境づくりに努めました。撮影の数カ月前に滝藤賢一さん、芳根京子さん、スタッフを集め、古舘さんはホワイトボードまで使って熱心な講義をしました。そこから、古舘流読み合わせと呼ぶべき独特なリハーサルを数カ月間、繰り返し。とにかくリアルにこだわる。その役が本当に存在する人間として、ナチュラルに所作や言い回しのスジが通ることを徹底しています。細かいところだと、古舘さんはセリフが出てくるまでに、たまに長い間があるんです。記憶力の低下が原因かな?なんて思ったりもしましたが『人間は本来、言葉を発するまで考える間が生じる』という敢えての計算。その場で起きたこと、その場で聞いたこと、それを感じてセリフを発する、予定調和を徹底して排するリアリティーの追究なんです」と明かし、脱帽した。

 14年10月期のドキュメンタリー風ドラマ「ワーキングデッド~働くゾンビたち~」(BSジャパン)に古舘をメイン初起用。「古舘さんは役どころに納得が行かなかったようで、収録当日も『うまく演じられる自信がない』と楽屋から出てきていただけなくて…説明しつつ、最後は押し切って、スタジオへ。打ち上げで『濱谷さんはあの時、オレを無理やりスタジオに連れていった!』と糾弾されました」と再び苦笑い。

 「敢えてオブラートに包まず申し上げますと、以前の印象は『いい俳優だけど、面倒くさい』でしたが、今回ご一緒してみたら、とんでもなく熱い人なのだと思いました。企画へのアプローチもそうですが、プロデューサーや監督を飲みに誘ってディスカッションしたりするのも大好きで、むしろお話好きなんだなと思いました。ただ、絶対に自分が納得するまで妥協しない。それは演技に対しても、環境に対しても。尊敬はしていますが、面倒くさいという印象は、あまり変わりませんね」と笑いながら、古舘の“素顔”を明かした。

 「古舘さんは今の日本の映像業界、芸能界のあり方に常に疑問を持っています。それは、俳優の技術や経験が軽視されているということだったり、事務所システムだったり。また、テレビを、映画、それどころかハリウッドと比較して、環境をどう変えるか常に考えて、訴えている。正直ちょっとウザいです(笑)。みんな、今が最良とは思ってない、けど、どこか慣れてしまっている。でも、古舘さんにはそういう妥協がない。誰かが声を上げて、意識を変えて、少しずつ変わらなきゃダメだと革命を起こそうとしている。自分でテレビ局に企画を持ち込み、スタッフィング、キャスティングにまで関わり、何ならお金の調達をやらせてくれ!とまで訴えてくる…トップスターならまだしも、こんなプロデュースまでこなす意識の高い俳優は、あまりいないと思います。その点では、もはや『古舘寛治は日本のブラッド・ピット』です。これは褒めすぎかもしれませんが、ご自身がそう言っていた気がします(笑)。この取り組みが評価されれば、映像業界を変えていく第一歩になると信じているし、第二、第三の古舘寛治が現れ、俳優のステータスや活躍の幅がもっと広がるはずだと信じている。そんな熱意に打たれて、僕も今回、いつの間にか、駆けずり回っていた気がします。視聴者の皆さんの反響からも、このチャレンジが間違いでなかったと手応えを感じています。是非、多くの視聴者と多くの作り手に、この “古舘革命”を見届けていただきたいです。『バイプレイヤーズ』の時は業界視聴率30%と答えたので、今回は業界視聴率31%を目指します!(笑)とにかく、多くの人に届いてほしいです」

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2020年2月7日のニュース