ハラさん 死の前日会っていた人物とは…ひとつだけあった解決の鍵 捜査打ち切りで切れた手がかりの糸

[ 2019年11月30日 09:00 ]

11月8日に日本ソロデビューシングルの発売記念トークショーを行ったハラさん
Photo By スポニチ

 「元KARAのハラちゃん、亡くなったらしいよ」。電話を受けたのは24日、午後7時半ごろだった。驚くのを通り越して、何の感情も抱けなかったことを覚えている。何しろ8日に、東京・池袋のイベントで元気な笑顔を見たばかり。その顔と現実が、しばらく結びつかなかった。

 ハラさんとは顔見知りとまではいかないがKARA時代から何度も接点があった。食事で同席したこともある。当時手がけようとしていたビジネスについて語る様子はとても勝ち気。それでいて、みんなの飲み物や場の雰囲気を誰よりも気にする優しさがあった。

 韓国に戻って、トラブルが報じられているのは知っていたが、今年6月にプロダクション尾木に入り、日本で再出発することが決まり、安心していた。タレントへの愛情や面倒見の良さで知られる事務所。とりわけ熱心なことで有名な担当チーフの女性は「日本で頑張るって、やる気なんです!応援してください!」とさまざまな媒体に呼びかけていた。

 デビュー曲「Midnight Queen」のミュージックビデオが解禁される記事を書くときは「KARAのヒップダンスに負けないくらいのインパクトを出すにはどうすればいいか」と数時間知恵を絞り合った。最終的に行き着いた「海藻ダンス」は残念ながら定着しなかったが、本気の度合いは分かってもらえると思う。

 それだけに、自殺の可能性が強まり、事務所スタッフの落胆も尋常ではなかった。報道の窓口となったチーフの女性には声をかけるのもはばかられた。半世紀以上のキャリアを誇る、いつも冷静な名物社長も「手がけたタレントがこういう形になったのは初めて」と珍しく感情をあらわにした。

 2人は韓国に飛び、家族葬の会場に向かった。心苦しく思いながら社長に電話をかけ取材をした。すると「遺体には対面できてないんだよ。見てしまうと受け入れなきゃいけなくなると思って」。

 チーフの女性は通信環境の都合で通話ができなかった。正直、できなくてホッとした部分もある。しかし様子が心配で、韓国に行った別の関係者に聞いたところ「遠くからでも分かるぐらい、泣いてました」。韓国の寒い風はさぞこたえるだろうとやるせなかった。

 スタッフはいまだ、自責の念にかられてしまうようだ。最も大きな要因は、明確な死の理由が残されていないことだ。現場に残された遺書めいたメモには「自分を愛せなくてごめん」という内容が書かれていたという。しかし、具体的な理由には触れられていない。

 それを解決する鍵がひとつだけあった。それはハラさんが死の前日の23日に会っていたという人物。事務所関係者は「その人物や、やりとりの内容が分かれば…」と捜査の進展を願っていた。

 しかし、葬儀までに地元警察が親族や親しい知人らに聞き込みをした結果、ハラさんが誰と会っていたかを把握している人は誰もいなかったという。死に事件性がなかったことから捜査も打ち切られて、手がかりの糸は完全に切れてしまった。

 「会っていた相手だけでも分かれば、何とか真実に迫れる可能性もあったのに…」とある事務所関係者は無念の思いを隠さない。

 ただ、最も苦しかったのはハラさんだったということは言うまでもない。真実を根掘り葉掘り追及しても、失われた命は戻らない。今はただ、天国で苦しみから解き放たれていることを心から祈りたい。(記者コラム)

続きを表示

2019年11月30日のニュース