小朝、意欲の3席に拍手!

[ 2019年11月15日 09:00 ]

春風亭小朝
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】春風亭小朝(64)の独演会に足を運んだ。1が4個並んだ11月11日午後2時開演の三越劇場。前半に「黄金餅(こがねもち)」、中入りを挟んで「竹の水仙」と初演の「鰍沢(かじかざわ)」という意欲的な3席。トップバッターを務めた春風亭勢朝(57)の「紀州」、特別ゲスト笛吹かなの篠笛ジャズも楽しく、2時間を超える高座を堪能した。

 「黄金餅」といえば、五代目古今亭志ん生の噺が耳になじんでいる。貧乏長屋に住むケチな僧侶の西念が体調を崩す。貯めた金をあの世に持っていきたいと、あんころ餅に詰め、それを丸のみして絶命。その様子をのぞき穴から見ていた隣人の金兵衛が火葬の時に腹だけ生焼けにしてもらって、その金を奪おうと算段…。何ともおぞましい噺だが、志ん生の口にかかるとまるで滑稽噺に変わってしまう。これも名人芸なんだろう。

 金兵衛は西念の亡きがらを菜付けの樽に入れ、長屋の連中に担がせて自分の菩提寺である麻布絶口釜無村(あざぶぜっこうかまなしむら)の木蓮寺まで運ぶ。下谷から釜無村までの道中付けが大きな聞きどころだ。

 「わーわー言いながら、下谷の山崎町を出まして、あれから上野の山下に出て、三枚橋を渡って上野広小路に出てきた。御成街道から五軒町に出て、そのころ堀様と鳥居様というお屋敷の前をまっつぐに…」

 立川談志版も楽しい。昭和40年代に録音された高座の音が残っている。道中をその頃の東京にあてはめればどうなるかをわかりやすく丁寧に説明。「キャバレー太郎」の愛称でもおなじみだった故福富太郎氏の店も出てきて、聞く度にくすりとさせられる。

 小朝の「黄金餅」は志ん生とも談志ともまた違っていた。野暮かもしれないが、つい活字で確認してみたくなる。無事に木蓮寺までたどりつくと、客席から自然と拍手がわいた。噺家みょう利に尽きる。内容の割に後味の悪さも残らないのは、小朝の柔らかな語り口のせいだろう。

 中入り後、名工・左甚五郎を主人公にした「竹の水仙」で笑わせた後、笛吹かなの演奏に続いて、この日のクライマックスがやってきた。本邦初演という「鰍沢」だ。

 幕末から明治にかけて活躍した三遊亭円朝が「卵酒・鉄砲・毒消しの護符」の3つのお題をもらって仕立てたという説や河竹黙阿弥の手になるという説などがあり、成立ははっきりしない。「噺によっては円朝よりうまい」とも評された弟子の四代目橘家円喬の十八番として有名。戦後も六代目三遊亭円生、八代目林家正蔵、十代目金原亭馬生といった名人、大看板が高座にかけてきた。

 これまで取り上げてこなかったとは意外だが、小朝にしても安易に挑めなかったということだろう。観客に配られた「御挨拶」に円朝のものではないサゲ(落ち)が3種類用意してあって、そのうちのプランAを使ったと書かれてあった。ちなみに「たった1本のお材木(お題目)で助かった」がオーソドックスなサゲ。

 これからどこかで触れるに違いないファンのために詳細は書かないが、プランB、Cも聞いてみたくなる。一歩を記した小朝版「鰍沢」は今後ますます熟成されていき、自家薬籠中の物になっていくはずだ。次に出合う日も楽しみだ。

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