魂の咆哮

[ 2019年4月17日 08:00 ]

14年ぶりのマスターズ制覇を果たし、歓喜の雄たけびを上げるウッズ(AP)
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 【我満晴朗 こう見えても新人類】4月15日の朝。春眠暁を覚えないままスイッチを入れたFMラジオからケイティ・ペリーのヒット曲「ロアー」が流れてくる。

 ”I got the eye of the tiger”

 むむっ、これは…?

 寝ぼけ眼でネットニュースを検索し、タイガー・ウッズのマスターズ優勝を知る。なるほどね。実にタイムリーな選曲ではないか。ディレクターのセンスに脱帽だ。ウイニングパットを沈めた直後の雄たけびも曲名そのものだし。

 タイガーの進撃が始まったのは1990年代後半だった。スタンフォード大を休学してプロ宣言したのが96年。翌97年4月にはマスターズをいきなり制して世間の度肝を抜いた。圧倒的な飛距離と繊細なパッティングは他の追随を許さない。トーナメントでは先行逃げ切りばかりでなく、「タイガー・チャージ」と名付けられたサンデーバックナインの猛追は優勝を争う選手が震え上がるほどの迫力があった。

 彼が23歳だった99年11月、数々の幸運が重なってインタビューする機会を得た。場所は千葉県成田市内のホテル。与えられた時間は30分ほど。ゴルフの話以外にも日本の印象やら当時付き合っていたガールフレンドについてやら、下世話な質問にも終始笑顔を絶やさず答えてくれた。

 インタビュー終盤にはこう問うてみた。「今のあなたにとって、ライバルは誰ですか」と。

 なぜこんな質問をしたのか。偶然にも会場のホテルには、あのセルジオ・ガルシアが滞在していたからだ。「エル・ニーニョ(神の子)」の異名を持つ19歳の俊英。ネクスト・タイガーとして世界中の注目を浴びていたスペインの神童が、期せずして同じ建物内にいる。先輩としても十分意識しているに違いない、という下心丸出しでの問いかけだったわけ。

 で、その答えは?

 「ライバルはゴルフコースです。世界のどこであろうと、どんな気象状況であろうと、勝つことができるのが究極のゴルファー。私はそれを目指したいのです」

 考えてみればもっともな話だ。テニスやボクシングのように対人競技ではないのがゴルフの特徴なのだから。通りすがりのオッサンみたいな質問をしてしまったと頭をかきながらホテルをすごすごと引き揚げた。

 そう言えば1997年マスターズ優勝は2位に12打差、ペブルビーチで行われた2000年全米オープンに至っては2位に15打差!! 世界に名だたる達人たちがスコアメークに四苦八苦する難コースで、この独走は通常ありえない。その頃のタイガーにとって、確かにライバルは人間ではなかった。

 今回の復活Vはコースだけではなく、紆余曲折あった過去の自分も克服したということだろう。ニュース映像で見た43歳のRoar、渋すぎるぞ。20年前に出演していた缶コーヒーのビターテイストを思い出してしまった。(専門委員)

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