「いだてん」熱演話題の中村獅童 役に重なる亡き父の人柄「ポッと浮かぶ」宮藤作品「ピンポン」転機に

[ 2019年2月24日 06:00 ]

NHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」に金栗実次役で出演している中村獅童(左)(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」(日曜後8・00)に出演している歌舞伎俳優の中村獅童(46)。前半の主人公・金栗四三(中村勘九郎)の兄・実次を演じている。強烈なインパクトを残した号泣シーンの裏側、実次に重なる“ある人物”の存在など、今作への思いを熱く語った。

 主演の勘九郎とは同じ歌舞伎役者で幼い頃から互いを知る間柄。「亡くなった勘三郎兄さん(勘九郎の父)にも息子のように可愛がっていただきました。勘九郎さんが大河ドラマで主役を務めるにあたって、少しでも力になれればという思いです」と語る。

 印象的だったのは第3回(1月20日放送)での熱演ぶり。上京する四三を家族総出で見送る場面で、実次は大量の鼻水を垂らしながら号泣した。獅童は「あの鼻水は“本物”です。感情がこみ上げてくると鼻水が出やすいんですよ。狙って鼻水を出したわけではなく、脚本に対して真っすぐに演じた結果です」と笑顔で振り返る。

 病弱な父・信彦(田口トモロヲ)に代わり、大黒柱として金栗家を支えてきた実次。四三に大きな期待を寄せ、家計が苦しいにも関わらず東京への進学を後押しする。獅童は、遠く離れた熊本から四三を見守る実次の姿に、生前の父・小川三喜雄さんが重なるという。

 三喜雄さんは初代中村獅童として歌舞伎役者の道を進んだが、幼くして廃業。その後、東映に入社し、映画プロデューサーとして活躍した。8歳で二代目中村獅童として初舞台を踏んだ獅童は「自分が歌舞伎役者をやりたいと言った時も“歌舞伎の世界では手助けすることはできない”と初舞台も観に来なかったし、子役時代も全く舞台を観に来ませんでした」と三喜雄さんについて振り返る。だが、獅童が歌舞伎役者として大成した頃、忘れられない出来事が起こる。

 「30歳を過ぎた頃に初めて主役を務めさせてもらったのですが、舞台の幕が上がった瞬間に客席で誰よりも大きい拍手をしていた人がいたんです。それが自分の父親でした。何もできないと言いながらも、陰でいろんな人に頭を下げていたことを後から聞きました。そういったこともあって、台本を読んで実次をイメージした時に父親の顔がポッと浮かぶんです」

 今作の脚本を手掛ける宮藤官九郎氏(48)とは深い縁で結ばれている。獅童が俳優としてブレークするきっかけとなったのが、宮藤氏が脚本を担当した02年公開の映画「ピンポン」だった。「『ピンポン』は役者人生の転機になった」と語るほど宮藤作品への思い入れは強く、今作についても「視点が次々と変わるのは宮藤さんらしいですよね。いろいろなところに目線が移るけど、どこかでちゃんとつながるのが一番面白い」と“宮藤ワールド”の魅力を語る。

 近現代大河、主演リレーなど異色要素の多い今作。獅童も「大河ドラマという長い歴史の中でひとつの挑戦」と位置付ける。「斬新で良いとおっしゃる方もいれば、大河らしくないとおっしゃる方もいて賛否両論かもしれません。でも、そこに向かっていくことが『挑戦』です。宮藤さんや監督を信じて、真っすぐな気持ちで演じていきたいですね」と抱負を語った。

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2019年2月24日のニュース